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農政・農協ニュース

健全性の確保貫く 信頼と期待を反映
―― JA共済連12年度決算 (7/26)
 全共連の通常総代会は26日、東京・高輪のホテルパシフィックで開き、平成12年度決算などを承認した。新井昌一会長は開会あいさつで「堅実な決算になった」と述べた。共済金の支払いに備えて積み立て、運用している責任準備金を増やし、支払い余力(ソルベンシー・マージン)比率を高めるなど経営の健全性を一層強める決算となった。共済事業本来の利益を示す指標である基礎利益は5029億円で、生保の最大手である日本生命の6187億円に次ぎ、生保第2位である第一生命の3599億円を上回った。

 12年度は生保5社が破綻たん。その多くが外資系に買収されるなど業界は大揺れだった。外資と異業種からの、いわゆるカタカナ生保の参入も目立った。
 国内生保各社の業績は、新契約高は増える傾向にあるものの、解約・失効も高水準で推移し、個人保険の保有契約高は4年連続の減少となった。簡易生命保険も前年度に引き続き新契約高、保有契約高ともに前年度の実績を下回った。
 そうした中で、JA共済は、昨年4月1日に都道府県共済連と全共連が一斉統合。21世紀へ向け新たなスタートを切った。
 そして逆風をつく精力的な事業推進の結果、新契約高で長期共済が31兆7979億円(保障共済金額)と前年度比2.7%の伸びとなり、年金共済も18.7%(年金年額)伸びた。これは過去最高の実績であり、生保への信頼が落ちた中で、JA共済に対する契約者の信頼と期待が一層高まったことの反映と見られる。
 長期共済では、建物更生共済が前年度に引き続き大幅な伸びだった。短期共済も伸びた。
 総代会では新井会長が開会あいさつで、これらの実績を報告。「統合初年度にふさわしい成果を挙げた」と役職員の努力を讃えた。
 しかし、長期共済のうち生命総合共済は前年度実績を下回った。また長期共済の保有契約高も389兆7481億円と前年より0.4%減少した。国内生保に比べ減少幅はわずかだが、2年続きの減少となった。
新井 昌一 会長
 
 このため新井会長は特に今年度における「保有純増の確保」を訴え、「より信頼性の高い共済を目ざしたい」との決意を示した。
 議案は前もって地区別総代会議で審議したため、総代会では、その結果を前田千尋専務が報告した後、事業報告や決算を承認した。
 閉会あいさつでは新井会長がJR東日本の子会社による米国産弁当輸入問題を取り上げ「今年産が大豊作になれば5万ヘクタールの青刈りを迫られる我々としては大きな憤りを感じる。厳重に抗議していきたい」と怒りを表明した。
 なお、12年度は生命総合共済の新契約高が減少したが、今年度に入って7月末の実績では、建更共済よりも生命共済のほうが前年度対比で伸びている(上原寿宰常務)という。前年度の場合は、生命共済が建更共済を大幅に伸ばしたあおりを受けた面もあるようだ。

◆「逆ざや」を吸収して基礎利益を確保

 12年度決算の特徴を上げてみると、まず新会計制度の導入がある。退職金や年金の積立不足分を15年以内に償却するという新退職給付会計では、各県本部ごとに差のあった不足分の全額を特別損失に計上し、一括処理した。償却期間の長い生保大手に比べ、JA共済は導入初年度で早々に今後への備えを固めた形だ。
 一方、統合で資産が37兆3480億円に増え、中でも有価証券が約8%も増加、リスクも増大したため価格変動準備金を積み増しした。また建更共済の契約増加にともなって、巨大災害リスクに備える異常危険準備金も積み増した。さらに情報技術(IT)関連投資などに備えて経営基盤整備積立金を新設した。
 こうしたことから「健全決算ができた」(上原寿宰常務)という通り、今回の決算は健全性の確保を貫いたものといえる。責任準備金も4.7%増やし、34兆5836億円とした。
 健全性の指標であるソルベンシー・マージン比率は、200%超が安全圏だが、それでも破たんした生保が出たため、12年度からは算出基準が厳格になった。新基準によるとJA共済は589%で、前年度より29.1ポイント高まった。
 総資産に対する不良債権の比率は0.21%で、最高19%強の大手中堅生保などに比べ、きわめて低い。
 今3月期決算から生保の収益性をみる指標として基礎利益が公表されたが、JA共済では、これが前年度より209億円増え、5029億円となった。これは日生に次ぐ高水準だ。
 基礎利益は、経常利益から有価証券の売却損益や臨時損益を差し引いたもので銀行の業務純益に当たる。
 生保業界では、超低金利下の運用難から、契約者に約束した予定利率を実際の運用利回りが下回る利差損(予定利率と運用利回りの差)、つまり逆ざやが続き、JA共済も、これが前年度より480億円多い2980億円となった。
 新契約高が増えても保有契約高が減るのは解約・失効率が高いためだ。保有契約が減り続けると、逆ざや(利差損)を埋める死差益(予定死亡率と実際の差)と費差益(予定経費と実際の差)も減ってしまう。
 JA共済の解約・失効率は生保各社より低水準だが、保有契約はやはり減少だ。JA共済の経常収益は前年度より0.1%増えて6兆5727億円となった。うち直接事業収益は、生保各社が減らしている中で、JA共済は受入共済掛金の増加から6.1%増えた。
 経常費用のうち直接事業費用は、支払共済金が減少したものの支払返戻金の増加で1.9%増加し、4兆2493億円となった。
 また責任準備金の繰入額は9.8%増やして1兆6003億円とした。
 その影響などで経常利益は、21%減少し、3631億円となった。当期剰余金は891億円。出資配当率は2%とし、また初めて全国1269JAに特別配当を行った。これも統合の効果の1つだ。

◆JA共済としては疑問 「既契約の予定利率引き下げ」

 生保の予定利率引下げを破たん前でも認めるようにするという制度見直しが金融審議会(金融庁長官などの諮問機関)で議論され、中間報告では賛否の両論併記となった。JA共済でも各地区別の総代会議で「全共連の考えはどうか」との質問が多かった。
 これに対し全共連は「そうした制度にしなくても十分にやっていける経営体力がある」(前田千尋専務)という。総代会議結果報告は、12年度の場合「逆ざやを経営全体の収益の中で吸収し、なお5029億円の基礎利益を確保しており大手生保と比べても高水準の経営の健全性を保持している」と述べている。
 また、新たな逆ざやの発生を最小限に抑制する措置を講じるなど、既契約の予定利率を引き下げる事態にならないように最重要課題として取り組む方針だ。
 さらに、経営の健全性を契約者へ直接アピールしているが、今後も安全で安心なJA共済の利用を呼びかける広報活動を積極的に展開していく方針だ。
 一方、事業推進では、ライフアドバイザー(LA)の指導員として推進活動に同行して技法面の改善などを指導するトレーナー(指導員)制度を拡充する。
 信用事業と合わせた系統全体の資金運用を考えてはどうかとの要望も出た。
 これについては、短期的な収益を追求するよりも、むしろ中長期的観点から安定的収益を得る運用をしているとの基本的な考え方を示した。共済資金の長期的性格を考慮したものだ。
 このため円貨建公社債、貸付金などの運用による安定したインカム収入を得ることを中心としているが、加えて契約者の実質的な掛金負担を軽減し、価格競争力を維持するため、一定の範囲内でより収益性の高い運用も行うこととしている。
 短期資金が中心となる信用事業の資金運用とは基本的なスタンスが異なるが、しかし具体的に協力できる分野では、農林中金全共連アセットマネジメント(株)の活用による確定拠出年金事業への参入など、できる限り系統全体としての資金運用の効率化を図っていく考え方も示した。

◆ガン共済は来年から若い人向けの仕組み開発も進める

 全共連の新井昌一会長、西村博之、前田千尋両専務らは総代会後の記者会見で経営の健全性確保に自信を示し、また当面の課題について次のように語った。

 昨年度は5社の破たんなどで生保に対する信頼度や安心度への問題意識が広がった。これを背景に、JA共済の生命総合共済でも保障の見直しという形で解約・失効や転換契約が増加した。今後は解約の申し出に対して、窓口対応を一層きちんとする。満期も増えているので、ともに契約の継続を図っていきたい。
 保有の減少は影響が大きいため新契約の増加でも歯止めをかけたい。また若年層の契約が減っているので次世代を担う人たちに好まれる仕組みを開発しながら新契約を増やしていく。
 生保と損保の中間商品である「第三分野」の解禁対策では、JA共済もガン共済の開発の検討等、今後ともニーズの多様化に対応したい。
 確定拠出年金共済は、農林中金とプロジェクトを組んで仕組みなどを検討している。これは契約者の自己責任をともなうから100%の理解を得た上で加入してもらう必要がある。このため推進する側の人づくりをきちんとしないと、あとで問題が起きる可能性があるので慎重に検討中だ。
 JAグループの自主ルールによるJAの破たん未然防止策については、JAの信用事業が連合会などに事業譲渡される場合、共済事業も一緒に譲渡できるようにと提案している。
 共済事業は最長30年にわたる契約だ。信用事業を譲渡したJAが共済事業をやれるのかどうか。契約者は、そんなJAとの契約を続けるのかどうか。信用と共済の両事業は一緒に譲渡する中で、従来の契約を保全しながら新しい契約を提供していくことで、その地域の事業を活性化していく責務があると考えている。


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