「安全宣言」を行った10月18日の記者会見で武部農相は、全頭検査前にと畜・生産された在庫牛肉を市場隔離することや畜産農家の経営安定のため物財費の支援などを検討していることを明らかにした。
このうち在庫牛肉の扱いについては、19日の記者会見で、生産者団体などが在庫を買い上げて保管し、国の指示で管理する場合に助成する仕組みとすることを明らかにした。ただし、具体的な隔離期間や隔離後の扱いについては明らかにしていない。
この問題では、自民党が在庫牛肉の全量を政府が買い上げて処理するよう求めているが、農水省は「処理するとか、焼いてしまえという話は論外」(遠藤副大臣、18日の記者会見)との姿勢をとっている。特定危険部位以外は安全であることからもともと全頭検査前の牛肉であっても安全だとしており、在庫牛肉を処分すればその姿勢を自ら否定することになるとの考えがあるためだ。
一方、自民党は検査した牛肉だけが出回る状況をつくることで早期の消費回復につなげるべきだと主張しており政府と党との調整が今後の焦点になる。
また、畜産の経営安定に向けては、肥育農家の物財費を支援する方向を検討している。価格下落にともなう所得補てん策としては、肉用牛肥育経営安定対策事業(マル緊事業)がある。これは肥育牛1頭あたりから得られる所得が平均家族労働費を下回った場合にその額の8割を補てんするもの。しかし、価格下落によって飼料代など物財費をも確保できない事態も想定されることから、マル緊事業に加えて物財費を支援することにした。