農水省は10月24日、総額1554億円規模の今年度のBSE関連対策を決めた。全頭検査前の在庫牛肉を市場隔離する生産者団体への支援、肉用牛経営への緊急支援として物財費の補てん、牛の総背番号制度の導入などが盛り込まれている。
1554億円のうち13年度当初予算での措置額が512億円あり、今回の要望額は905億円。このうち補正予算での要望額は265億円で額については政全体で調整する。
農家経営対策には488億円をあてる。このうち483億円が牛枝肉価格の安定ためのの予算で、価格が安定基準価格(省令価格:780円/kg)を下回った場合、生産者団体が行う調整保管費用を支援する。
肉用牛肥育経営の緊急支援策では、現行の「肉用牛肥育経営安定対策事業(マル緊事業)」では対応できない収益性の悪化に対応した事業を新たに設ける。
マル緊事業では、粗収益が家族労働費を下回った場合、下回った分の8割を補てんしている。しかし、BSE発生で粗収益が家族労働費を除く生産費(物財費)をも割り込む事態も懸念されるため、新たな物財費を下回った場合はその赤字を毎月算定し10割補てんする仕組みを導入する。家族労働費部分の補てんは従来どおりの割合で4半期ごとに算定、補てんされる。
子牛価格が低下したときに助成金を交付することも決めた。黒毛和種の場合、1頭35万円を下回ると、価格低下の程度に応じて1頭1万円から最大で4万6000円助成される。褐色和種の場合は32万円を下回ると2万5000円、その他の肉専用種では23万円を下回ると1万9000円が助成される。これは「子牛生産拡大奨励事業」の特例措置で、飼養規模に関係なく拡大者と同額の助成が行われる。
そのほか、BSE検査の円滑な実施のために、農協などが行う出荷繰り延べに対しての支援も行う。
BSE検査開始前にと畜、製造され滞留在庫となっている牛肉について、国は生産者団体に冷凍し市場隔離してもらう方針を決めているが、支援のための予算92億円を盛り込んだ。市場隔離の対象となる在庫牛肉は1万3000トンと見込まれ、8カ月間の保管費用を算出して額を決めた。また、食肉センターでの可食内蔵の区分管理、特定危険部位の焼却処理の促進のために10億円を当てる。
取り引きが困難となった肉骨粉の焼却処理の推進のための予算と、安全な肉骨粉の供給体制を整備するため、豚、鳥由来の原料を分別処理できるレンダリング施設や国際基準に適合した高度滅菌処理施設の整備などを推進するための予算として合わせて355億円を組んだ。さらに農家で発生する斃死牛を適切に焼却処理するため、最終処分場の確保、一次処理用機械施設の整備などの推進のため22億円をあてる。斃死牛は年間15万頭にのぼるという。
また、BSEの監視体制の強化策として、農場段階でのサーベイランス強化と飼料への肉骨粉混入防止のための検査強化に9億円を確保するほか、トレーサビリティ・システムの確立のため、耳票による牛の総背番号制の導入に向け34億円を計上している。総背番号制は450万頭全頭を対象に準備を進めるという。