世界貿易機関(WTO)は加盟国の閣僚会議を11月9日から13日までカタールの首都ドーハで開き、多角的貿易交渉(新ラウンド)を立ち上げる閣僚宣言を採択する。日本政府は、先に提案した主張が通るような交渉の枠組み確保を、宣言に盛り込むことを目ざす。新ラウンド立ち上げの柱となるのは、農業交渉の枠組みだ。これが宣言内容にどう盛り込まれるかが注目される。
WTO一般理事会のハービンソン議長(在ジュネーブ香港大使)は10月27日に最終的な宣言草案を加盟国に示した。
それによると、農業部分には「非貿易的関心事項に留意するとともに、それが農業協定で規定されている通り交渉で考慮されることを確認する」などの文言がある。
日本提案は、農産物貿易については、自由化の追求だけでなく、環境保全など農業が持つ多面的機能の発揮や、食料安全保障の追求が基本的な重要事項であるとしている。
宣言草案は、こうした貿易以外の関心事項が交渉で「考慮されることを確認する」として、日本提案を取り入れた。これは日本の主張を通す足がかりとなる。
一方、オーストラリアなど輸出補助金のない農産物輸出国でつくるケアンズグループは、農産物を工業製品と同一の貿易ルールの下におく農工一体論を主張しているが、これは草案から排除された。
また同グループと米国は、農業協定の枠組みを超えた『野心的な』交渉結果を展望する記述が宣言には必要だ、と交渉結果の先取りも主張しているが、これも草案に入っていない。
このため閣僚会議では同グループや米国の巻き返しが予想され、宣言がどうまとまるか予断を許さない。
JAグループは、1日の全中理事会で、こうした情勢を確認し、日本政府の交渉を支援するため代表団をカタールへ派遣することを決めた。また、改めて閣僚宣言について、JAグループの基本方針を確認した。
これによると、非貿易的関心事項をきちんと宣言に位置づけ、また交渉の結果を先取りすることなく、日本提案の実現に結びつく交渉展開が図れるような宣言内容を求めた。
また、農業が他の分野よりも早く合意することのないよう幅広いラウンドの立ち上げを図ることも求めた。さらに農工一体論には断固反対すると確認した。
JAグループ代表団の派遣期間は7日から9日間。現地では、国会議員と連携して政府を支援。また日本の主張と共通点の多い欧州連合(EU)など主要国の農業団体と意見交換する。
一方、JA全中の米国コンサルタントなどを通じて情報を集め、分析する。さらに「JAグループ」の主張を3ヵ国語で配布する。
代表団のメンバーは▽原田睦民全中会長▽大池裕全農会長▽新井昌一全共連会長▽宮田勇WTO農業交渉対策中央本部副委員長▽谷則男全国農協青年組織協議会会長▽山田俊男全中専務ほか事務局数人。