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ペイオフ解禁後も顧客が安心して貯金できるJAにするための「JAバンク基本方針」が、7日の農林中金臨時総代会で決まった。問題を抱えるJAを早く見つけて改善し、破たんを未然に防ぐシステムが柱だ。このため、行政上は4%で線引きされた自己資本比率を、独自に8%と健全性のハードルを高くしている。そして8%を割り込むなど、少しでも問題のあるJAに対しては、資金運用制限、リストラなどの業務改善、上部団体への事業譲渡を義務づけたことなどが内容だ。
JAが破たんすることのないようにして、利用者の安心と信頼を確保するのが基本方針のねらいだ。このため全国のJAと信連と農林中金が実質的に1つの金融機関のように活動していく「JAバンクシステム」という枠組みを確立し、総合力の発揮をはかる。
農林中金は、JAと信連の金融業務を指導する「JAバンク中央本部」を先に設置したが、各信連にも都道府県本部を置き、各JAの経営状況を点検(モニタリング)し、問題を早期に発見して改善を進め、破たんを未然に防いでいく。
問題JAの援助には、JAと信連と農林中金の積立金による相互援助制度があるが、うち農林中金の積立金は別建てとし、新たに設立する「JAバンク支援協会」(新法による指定支援法人)の基金とする。
これまでの相援制度では農協法により資金贈与や利子補給などに限られたが、農林中金の積立金を外部法人化することで、課題だった資本注入も可能となり、自己資本比率の向上も支援できることになった。
自主ルールで自己資本比率8%の高い水準を設定したことについて農林中金の上野博史理事長は「日本の代表的な金融機関の1つとして信頼され、そして利用者から選ばれるためにはやはり8%ほどのレベルが求められるだろう」と総代会後の記者会見で語った。
また、増田陸奥夫常務は「4%未満のJAは平成12事業年度末で30あり、これらJAにはすでに昨年から集中的に対処してきて、資産処分や合併、事業譲渡などを決め、実行もしている。来年3月までには確実に対策を完了できる見込みだ」という。
30JA以外にも厳格な自己査定によって4%を下回る可能性のあるJAがあり、これらに対しても、最終的な対処方針をほぼ固めており、必要なJAには貯金保険機構と相援制度からの資金手当てもしてきているとのことだ。
農林中金は問題JAを約100として手を打ってきたが、合併や事業譲渡などもあり、来春までに全JAの4%クリアには、自信を持っているようだ。
一方、JAバンクシステムには、一体的運営で全国どこでも同じように良質で高度な金融サービスを提供するという目的がある。
これによって、激化するリテール(小口金融)分野での競争に打ち勝っていくことをねらう。
基本方針は、経営状況の点検に当たってJAと信連に提出を求める経営管理資料の種類や、問題がある場合の資産精査の実施基準などを細かく規定。さらに経営改善の取り組み内容や支援策などを詳しく示した。これらは今年6月に成立した「信用事業の再編・強化法」を受けたもので、JAバンクシステムも来年1月の同法施行と共に本格的に動き出すことになる。