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12月20日、JA全青協は東京・新橋駅前で「日本農業理解促進に向けた街頭宣伝行動」を行った。師走の街頭で「国産野菜と日本農業への理解」を消費者にアピールした。 |
JAグループが強く求めていたネギなど3品目に対するセーフガード本発動は結局、実施されないことになった。今後は、実効ある輸入抑制措置が実現できる仕組みができるかどうかが最大の課題となる。
12月21日に開かれた日中閣僚会議では、(1)日本側はネギ、生しいたけ、畳表のセーフガード確定措置(本発動)を実施しないことを決定、(2)中国側は自動車、携帯・車載電話、空調機に対する特別関税(100%)の追加徴収措置を撤廃することを決定、(3)日中両国は、政府、民間両ルートを通じて農産物貿易の協力について検討、強化する、との3項目の覚え書きを交わしすことで合意。この問題は、セーフガード本発動の期限としていたぎりぎりの21日に、話し合い解決で決着した。
今後は、日中双方で設立する農産物貿易協議会で3品目の貿易スキームをつくり「秩序ある貿易を促進する」ことになった。
事務レベルの交渉で日本側は、実効ある輸入抑制を図るため貿易数量についての取り決めを求めたが、中国側はそれはWTO(世界貿易機関)協定違反だと拒否。そのため今後、協議会で貿易スキームをつくるといっても、中国からの輸出数量を取り決めることにはならない見込み。
覚え書きでは、生産者など幅広い関係者が参加した同協議会で、3品目の需要、品質、生産、価格などの情報を交換し、作付け、生産などを誘導するとなっている。農水省の説明では、この協議会に両国政府が関与はするという。ただ、中国側も参加し実質的に官民協議なるかどうかは今後の検討次第だ。協議会は来年2月ごろにも設置される見込み。
また、中国政府も業界に対する指導を強化し、違法貿易を取り締まり、必要に応じて日本と協議することが確認された。
今回の合意について農水省は、「セーフガードはあくまで緊急措置で4年から延長しても8年。それにくらべて今回の合意は永続性が持ち得るのがメリット」と説明する。また、合意に至った理由として、ネギ、生しいたけは11月から農畜産物の生産・輸出業者団体である中国食品土畜進出口商会が自主的な貿易制限を実施し始めたことや、畳表は政府による輸出許可という管理が実施されたことも「評価した」という。協議会が設置されるまでの間も、こうした中国側の取り組みによって輸出が抑制できるとも判断した。
3品目のセーフガードの本発動取りやめは、今回に限ってのこと。中国側の自主的な輸出抑制措置に実効性がなく急増し、また、話し合いでも解決できないとなれば「セーフガードを発動しないということではない」(農水省国際調整課)という。しかし、合意は、今後の日中間の農産物貿易摩擦解決のあり方を規定するものというのが一般的な見方だろう。
ショウガ、ニンニクでは民間主体の貿易安定策がとられているが、輸入の増加は止まっていない。
今後めざす3品目の「秩序ある貿易」が日本の生産者の構造改革に取り組みを阻まないよう、政府としてどう実効性のある答えを導き出すのかが、問われる。
◆JA全中 原田会長が談話
12月21日、JA全中の原田睦民会長は日中合意について「早急に具体的な詰め行い、これまで不安を抱いてきた3品目の生産者が安心して生産にいそしめるよう、実効ある輸入抑制が図れる仕組みの確立に向けて引き続き運動を展開していく必要がある。また、今後とも予想される貿易摩擦において、対等な日中両国間の関係の樹立と、わが国の食料、農業の将来方向をふまえた、わが国政府の毅然とした対応を求めていく必要がある」との談話を発表した。