農水省は3月19日、さきに開催した「農業経営の法人化に関する意見交換会」(3月6日)の議事概要を公表した。この交換会は農水省第一特別会議室で12時30分から15時まで行われた。出席者及び当日出た主な意見は次のとおり。
<出席者>
八木響子・(株)アスケン代表取締役、佐藤希志男・(株)ヒルズ代表取締役、鈴木隆博・(株)浜松花き代表取締役、佛田利弘・(株)ぶった農産代表取締役、千田千代和・(株)エコファームみかた代表取締役、米山謙・同ゼネラル・マネージャー、田中良隆・(株)グリーンちゅうず代表取締役、麻生哲朗・(株)麻生園芸代表取締役、(省側)武部農水相、遠藤同副大臣、岩永政務官、川村経営局長ほか。
<主な発言>
1.株式会社化の背景・目的など
▽観光農園等の経営展開の上で会社のイメージアップをねらって社名変更し、有限会社から株式会社に変更した。
▽有限会社でハウス栽培してきたが、株式会社の社長になりたいと、昨年の農地法改正を受けて株式会社化し、スーパーL資金を借りて農地を取得。
▽農業に関心ある友人が多数おり、その能力を経営に取り込みたい。今後の経営承継は親族だけに限られない。将来、社員や消費者に株を持ってもらうこと等を考え株式会社化した。
▽町内の耕作放棄地、荒廃田解消を主なねらいに行政主導で株式会社を設立。会社のマネージャーは全国から公募して元サラリーマンを採用、柔軟経営に取り組んでもらっている。
▽一定事項を登記しておけば、取締役会だけで持ち分の移動等に関し経営決定することができ機動的なので株式会社化した。
▽輸入増加や農産物価格の低迷もあり、今後、生産だけでは厳しくなるので加工なども取り入れる必要が生じ、株式会社化した。
2.農業生産法人制度について
▽農業は生産者と消費者がどう結びつくかが重要現行農地法の運用上、販売力のない他の農家の農産物を売るためには別会社をつくらざるを得ない。
▽農業外の構成員は現行農地法上25%までしか出資できないが、生産者や今回創設される投資会社等のパブリックなものは50%くらいまで出資できるようにしても良いのでは。
▽土地利用型農業では地域といかにうまくやっていくかが課題。農業参入で、東京に本社がある企業が落下傘部隊で地域に入ってきてうまくやっていければ良いが、うまくいかないときが不安。そこが担保されないと、何でも参入がいいとはいえない。
▽農業生産法人を農業委員会がチェックすることになっているが、チェック能力のある農業委員会がいくつあるのか疑問。
▽農業委員会は、制度が改正されても新制度の理解が不十分な面がある。
▽農業参入では、農業者とはだれなのか、地域でもっと話し合う必要がある。
▽農業生産法人制度の構成員要件はわかりにくい。4分の3は農業者、さらに役員の半分は農業者で4分の1は農作業に従事する、というようなことは一般会社では意識されないこと。
▽子会社等をつくって農業展開ができるよう出資制限を緩和できないか。
▽構成員として個人が入る必要があり、行政または農協の100%出資による法人を設立できない。農地保全等特定の政策目的の場合は要件を緩和できないか。
3.経営上の課題その他
▽販路開拓が重要だが、従業員の安定雇用などの課題がある。
▽一般ユーザーのニーズに合わせて生産すること、売れるものをつくることが重要。
▽農産物の価格低迷のツケをすべて生産者がかぶっており、生産者、消費者、流通業者がそこそこ納得できる価格形成が長い目で見ると重要。
▽農村地域維持のためには、非生産的部門を含め経営のバランスのとれるものにすることが重要。
▽フレックス制や年俸制導入、従業員とのコミュニケーション方法などで中小企業診断士などに相談するが、相談役になれる人がいない。会計のパートナーはいるが、マーケティング、消費者とのコミュニケーションをどうするかなど農業経営のパートナーがいない。
▽農業経営を診断したり、マネージメントできる人材が少ない。
▽求人広告には多数の応募があるが、農業現場で即戦力になるような人がいない。農業大学校のような即戦力を育てる教育機関がもっと必要。
▽事業拡大にはもっと資金確保や価格安定のための費用が必要。
▽農業は効率制だけでなく、地域の特産物を消滅させない、地域を維持していく視点も重要。
▽生産と消費の密接な関係を規定するような法律の中で、担い手(経営)について規定されるべき。
▽販路開拓は、企業との連携も重要だが、差別化を図れるような高度な加工技術をもつことが重要。