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農政・農協ニュース

安心システムの定着や意識改革などを論点に
JA全中が経済事業刷新を公開で議論 (4/3)

刷新委員会
 食品の偽装表示問題でJAグループに対する国民の信頼が揺らいでいるとして、JA全中は4月3日に「消費者から信頼され、生産者の負託に応える経済事業の刷新委員会」第1回会合を開き、問題点や課題を議論した。今後さらに刷新方策を検討し、信頼再構築を図る。委員会は生協などの消費者団体代表、量販店幹部や大学院教授ら学識経験者代表など17人で構成。小島正興・国民経済研究協会監事(元セコム(株)会長)を座長に選んだ。JAグループからは原田睦民全中会長はじめ全農役員らが出席し、公開で議論を展開した。

 全農の子会社・全農チキンフーズ(株)の日本農林規格(JAS)法違反などについて小島座長は「偶発的に偽装問題が起こったのではなく、構造的な問題があったのではないかとされている。経済事業システム全体の刷新という観点から実りのある提言をまとめたい」と趣旨説明をした。
 全農の四ノ宮孝義専務はチキンフーズ問題を「JAグループに対する信頼だけではなく、国産の食品全体に対する信頼を損なう不祥事である」と位置づけて陳謝し、全農の再発防止策などを報告した。
 これに対して生産者委員は「食い物の恨みは恐ろしいから、肚を据えた取り組みが必要だ。しかし制度は改善できるが、意識改革や体質改善となると難しい」との課題を指摘した。
 また「問題が起きなければ、この刷新委員会はできなかっただろう。全中と全農という縦割り組織が一体となって対応していこうという決意が感じられる。これをチャンスととらえるべきだ」との見方も出た。
 系統の閉鎖的な体質を問う論点では、学識経験者から「JAグループはまだ消費者に向かって開かれていない。今後、全農は消費者組織との定期懇談会を設けるというが、窓口職員が本当に消費者サイドに立って対応できるシステムがつくれるのかどうか。例えば『松下』や『花王』は商品を改善するためにお客の苦情を歓迎しているが、そうした機能する窓口をつくる必要がある」と指摘した。
 「生産者が国家や地域を担うのだという意識は、農業団体だけでなく、鉄鋼などの素材メーカーにもみられる」との意見も出た。
 この日は全中から、経済事業の刷新と併せて食品表示の自主点検と、国産農産物の安心・安全システムの構築方策についても説明があり、これを確認した。

 次回は5月中旬に開き、第1回の論点整理にもとづく議論を深め、第3回は6月に開いて刷新の方向性を整理することにした。
 第1回の論点では、全農チキンフーズの問題について消費者委員が「産直では食品の仕様基準を定めて取り引きしている。しかし産直取り引きはまだ発展途上段階にあり、協同組合間提携という甘さもあったかも知れない。今後は契約内容や受発注の仕方などもきちんと検討していく必要がある」と提起した。
 一方、生産者委員は「急激な需要の変化に生産が対応できないという事情を理解してほしい」と述べた。
 その他の論点では▽農畜産物に工業製品並みの規格を求める必要性があるのか見直すべきだ▽法令順守といっても、表示基準そのものが例えばジュースやビールにしても非常にあいまいだ▽安心システムといっても消費者との間には距離がある▽トレーサビリティの第3者認証は外国のほうが進んでいる。日本も定着を急がないといけない−−などの意見が出た。
 なお、刷新委員にはJA組合長3人とJA中央会会長3人に加え、生産者委員として農業生産法人代表1人とJA全青協、JA女性協の会長が入っている。


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