「JA改革のペースが遅い」など手厳しい意見が4月10日開いた農水省の「農協系統の事業・組織検討会」で各委員から相次いだ。この日は武部勤農相、原田睦民JA全中会長、大池裕JA全農会長らも出席した。
農相はあいさつで「JAグループの虚偽表示事件が続発している」と口火を切り、「全農は昨年、宮崎県経済連の名を不当に使って千切り大根を製造・販売し、業務改善命令を受けたが、今回のチキンフーズ問題はそれに続くもので、事業運営や子会社管理に問題がある」と改革断行を迫った。また「消費者代表を全農の経営管理委員に採用して経営に参加させるとか、徹底した情報開示などを全農に求め、食品表示に対する国民の信頼回復を図っていきたい」と述べた。
その内容は翌々日に出した同省の業務改善命令と同じだった。
これに対し原田JA全中会長は「今回の問題は、反社会的行為であると認識している。全中では経済事業刷新委員会を立ち上げた。改めて改革の具体策を出したい」と述べた。
また大池JA全農会長は「安全性、信頼性の模範であるべき系統がこうした問題を起こしてざんきに耐えない」と陳謝し、再発防止対策などを説明した。
このあとJA全国大会決議(一昨年)に取り組む行動計画の進行状況や経済事業刷新委員会での検討状況など農協改革の現状をJAグループから報告した。
意見交換では農協系統の閉鎖性を批判し、情報公開を求める意見が多かった。
しかしJA全中の場合は経済事業刷新委員会やJA改革会議をはじめJA幹部職員の研修会など多くを公開で実施しており、篠塚勝夫JA全中常務は、そうした改革の進行を報告した。
組織問題では生産者委員から▽JA合併で風通しが悪くなる例が多く、情報伝達が不十分だ。人事も適材適所ではない▽経営管理委員会の導入に期待している、などの意見が出た。
偽装表示事件では学識経験者委員が「農協は商社の悪さを兼ね備えてきたのではないか。もうけ主義になっている。農協の良さを生かしながら株式会社の良さを取り入れていくようにすべきだ」と指摘した。
また▽以前は「農協の商品だから大丈夫」が通念だったが、最近は「農協だから不安だ」に変わってきた▽有機飼育などの限定商品の欠品は当然なのだから、なぜ消費者の理解を求めなかったのか。生協と農協は話合いのできる組織なのに▽産直で裏切られたのはまことに残念(消費者委員)▽これをチャンスに情報開示をきちんとすれば信頼は回復できる(同上)などの意見があった。
農業資材の値下げでは生産者委員が▽全農の低コスト対策に目に見えた効果が出てこない▽いつまで待たせる気か、などと批判した。
同検討会は農協改革2法の準備のために17回開いたが、成立後は改革支援をテーマに2回開いた。今年は今回が初めて。次回は6月に開く予定(経営局協同組織課)。