BSE発生で販売不振となった全頭検査開始前の牛肉を国が保管する事業では、農畜産業振興事業団から実施6団体に1kgあたり707円(部分肉ベース)の助成金が支払われることになっている。内訳は、冷凍保管経費として1kg329円、冷凍格差として1kg378円とされた。
冷凍格差は、冷蔵(チルド)牛肉を冷凍することによる評価損への補てん金で、輸入牛肉(米国)の価格をもとに算定した。
一方、事業の対象は、BSE全頭検査前にと畜解体処理された国産牛肉、とだけ規定されており、同事業による助成を受けるため、“改めて冷凍すること”、といった冷凍時期についてのきまりはなかった。
そのため、長期間にわたって冷凍されていた在庫牛肉も今回の事業で買い上げられているのではないか、と一部報道で批判が出ていた。
こうしたことから、農水省は4月19日、助成要件の一定の見直しをする方針を決め、(1)同事業実施が決まった10月26日以降の冷凍、(2)BSE発生後の冷凍、(3)BSE発生前の冷凍、という3つの基準で今後の対応を検討していくことにした。
このうち、問題となるのは、(3)に該当するケース。
食肉業界では、年末の価格上昇期に向け、相場が比較的安い6月ごろに仕入れた牛肉を冷凍させて高値期を待つ業者もいる。当初、この事業は8カ月保管後の翌年6月には市場で販売する方針だったため、そうした業者が高値期に販売できないことから、農水省は損失補てんの対象になると判断し事業をスタートさせた。
しかし、(3)に該当する牛肉のなかには、加工日が古く「年末の高値期待で冷凍したとは考えにくいものもある」(農水省食肉鶏卵課)。そこで要件を見直すことにしたものだが、実際には客観的な線引きは難しいという見方も出ており、農水省は早急に事業実施6団体と相談するとしている。
同事業では1万3000トンの牛肉が保管され助成金合計は92億円。ただ、個々の業者への精算はまだ行われておらず、かりに不当な例があったとしても現段階でそれによる利益を得た業者はいない。