◆組織的責任をとり役職員を懲戒処分
東都生協理事会は5月13日に、茨城玉川農協と匝瑳(そうさ)農産物供給センターによる豚肉偽装問題について、「豚肉問題のまとめと今後の対応方針」をまとめ、同生協組合員に配布するとともに、5月30日の通常総代会で特別議案として提案することにした。
この「対応方針」では、生協指定の豚肉とその加工品が届けられなかった「供給責任」、東都生協を選んで購入してきた組合員の期待や信頼を傷つけた「管理責任」、事業・組合員活動の停滞や動揺を招いた「経営責任」を「理事会として痛感」し「組合員の皆さまに深くお詫びします」と、理事会の責任を明らかにし陳謝した。
とくに、▽匝瑳農産物供給センターにおける問題を見抜けなかった点▽茨城玉川農協における問題を見抜けなかった点▽産直の信頼を裏付ける確認が不十分だった点で、安全な食と健全な農を願う基本政策を実施する上での具体的な取り組みに「甘さが」あったとしている。
◆事業継続のため組合員への返金は2か月分のみ
今回の豚肉偽装問題は、産直事業と国内農畜産物への信頼を大きく損ねる事件だが、同生協は「産直への信頼を取り戻すために」以下のような方針を「着実に進め、組合員の期待にしっかり応え」ていきたいとしている。それは
1)理事会の責任
供給責任・管理責任・経営責任を「痛感し、現任の役職員に対して減俸などの懲戒処分」を行う。また、「自らの意志による役員報酬の一部を返上」する。
2)組合員への返金
同生協は従来、商品の仕様違反については全額を返金してきたが、今回は「同様の対応をおこなうと、東都生協の事業継続ができなくなってしまいます。より商品を確かなものにしていくためにも事業継続に支障が出ない範囲で、できる限りの返金をさせていただきます」とし、具体的には、今年の2か月分(総額約2億円)を返金する。
◆農協へは違約金・損害賠償請求など厳しい対応
3)匝瑳供給センターに対して
同センターでは、再発防止対策が講じられ「4月2回(目の共同購入)より供給を再開」しているが、今後は、「確実な分別管理ができているか定期的な点検」を進めるとともに、「違約金および損害賠償を請求」する。
4)茨城玉川農協に対して
「違約金および損害賠償を請求」するが、さらに法令や定款に違反した「偽装の関与者への責任の明確化を求め」、これを「組織的に表明できないのであれば、卵、れんこん、加工商品を含め、茨城玉川農協との直接取引は全面中止すると同時に、関与者への刑事告発と茨城玉川農協への民事訴訟を検討」し、6月中に結論を出すことにしている。
◆産直への信頼を取り戻すために
5)安全・安心な豚肉の安定的な供給について
「約束どおりの飼育が確認されたJAやさとのLWB(バークランド豚)を6月4回から」供給再開するとともに、「確かな内容の豚肉新産地も提案」。食肉の生産・流通に関する共同研究も提携して進める。
6)安全・安心をより確かなものにしていく体制確立
主要な取引先に対して、「特別チームによる点検調査活動を強化」する。また、職員の研修・人材育成を系統的に進める。
7)「土づくり宣言21エコプラン」を進める
「土づくり宣言21エコプラン」により「専門家や研究者と提携した検証を行い、これまでの産直の弱点を補強」するとともに、「取引先との契約書や覚書の再点検」を進めていく。
東都生協では、この「対応方針」をチラシにして配布すると同時に、同生協ホームページ(http://www.tohto-coop.or.jp)にも公開し、生協組合員の意見を求めている。
【匝瑳農産物供給センターの豚肉偽装の概要】
同センターが東都生協などへ納入した豚肉総量のうち約12%が、指定産地以外の豚肉だった。生産農家は指定どおりの飼育管理を行い、と畜解体処理委託先でもきちんと分別管理されていたが、生産者が設立・運営する同センターで「きわめてずさんな管理が行われていた」ことが原因。現在は、分別管理の徹底により供給を再開している。
【茨城玉川農協の豚肉偽装の概要】
少なくとも1986年から指定以外の豚肉を東都生協に納品していた。指定豚肉のカット委託先に他の肉との分別管理を依頼していた形跡もなく、実際に分別管理されていなかった。さらに、同農協のミートセンターでは、輸入豚肉を含む指定以外の豚のカット肉仕入れが常態化していた。また、指定どおりの飼育管理をしていた証明を提出できた生産者は9戸中3戸に過ぎなかった。