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農政・農協ニュース

米提案に怒りの声
全中のWTO国際シンポ (7/26)

 JA全中は各国の農業者団体代表を招き「WTO農業交渉に関する国際シンポジウム」を7月26日、東京・虎ノ門パストラルで開催。米国政府の新提案をめぐっては「身勝手過ぎる」との反発が噴出した。
 全中の山田俊男専務が、関税の大幅引き下げや輸入数量枠の拡大などを他国に求める米国の新提案を取り上げ「我々には到底,受け入れられない内容だ」と口火を切った。
 「協力のためのアジア農業者グループ」(AFGC)のラウル・Q・モンテマイヨール会長(フィリピン)も、米国は新農業法で国内支持を強めながら、他国には大幅な保護削減を求めたとし「提案は偽善的だ。受け入れられない」と批判。 見解を質された米国ナショナル・ファーマーズ・ユニオン(NFU)のディビッド・J・フレデリクソン会長も「世界の農業者にダメージを与える提案だ。隣国のカナダなどでも問題にするだろう。提案をよく分析した上で問題提起をしなくてはならない」とした。 NFUは家族経営が中心の農業者団体。同会長はまた「大手の会社は農産物を生産コストに見合った適正価格で買わない。募る農家の不満に政治がからんで新農業法になった。この法律と提案との間には一貫性がない。議会と行政には偽善がある」とも指摘した。
 この問題に先立つ農業法をめぐる討論では「私は農業への財政支援は必要だと思う。また農業法は貿易を歪曲するものではないという米国内の合意もある」との見解を示した。
 さらに農業の多面的機能については「家族農業は多面的機能を持ち、米国民に恩恵を与えていると私は信じている」と語った。
 一方、EU農業協同組合連合会(COGECA)のクヌード・J・ヴェスト副会長は多面的機能の中で動物愛護を強調した。
 また米国の穀物は市場価格から離れて完全に保護されている」とし「輸出信用保証を削減すべきだ」と主張。さらにEUのアフリカ諸国に対する支援措置を挙げ「途上国への特別の配慮」を支持した。
 AFGC会長は途上国にとっては関税引き下げが困難であることを説き、またWTO加盟国の中でアジアグループは「ネットワークをつくる必要がある」と訴えた。
 龍谷大学のジェームズ・R・シンプソン教授(米国フロリダ州立大学名誉教授)も「全中が取り組んできたようにアジア諸国の会議をもっと開き、怒りを込めて食料安全保障などをWTOに主張すべきだ。日本のメッセージ発信はまだ足りない」と苦言を呈した。
 冒頭の提起では山田専務がコメのミニマムアクセスを5%に戻すべきだと主張した。日本は98年まで関税化ではなく特例措置を採用したため7.2%を受け入れている。しかも、それはコメ消費量が多かった86年から88年まで3年間の数値を基準にしているという大きな矛盾がある。
 なおコーディネーターの服部信司・食料・農林漁業・環境フォーラム幹事長(東洋大学教授)は、WTO農業交渉に向けた各パネリストの共通認識などを挙げてしめくくった。


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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