奈良で開いた5カ国農相会議に向けて米国が農産物関税率の大幅削減などを新たに提案したことについてJA全中は7月26日「米国農業法の成立で失った国際的信頼の回復を意図して他国に圧力をかけるという交渉戦術に過ぎず、世界農業の持続的発展を図ろうという建設的な提案とはいえない」との原田睦民会長の談話を発表した。
5カ国農相会議は世界貿易機関(WTO)の農業交渉をにらんで、農業の多面的機能や世界の食料・農業政策について意見交換をしている。米国政府は、ここで新提案の内容を説明し、月末にはWTO加盟国に提案する方針だ。
内容は▽農産物関税率の世界平均は62%だが、これを25%以下へと大幅に下げる▽特別セーフガードを削減する▽国家貿易を削減するなど、どれをとっても日本の農業団体の主張とは正反対のものばかり。
日本のコメ関係では一定の輸入数量を超える部分に適用される高率関税の引下げを求め、さらに米麦を国家貿易とし、野菜などのセーフガード強化を求める日本をねらい撃ちしたような内容が多い。
米国は新農業法で大規模経営への補助金を大幅に増やすなど農産物輸出を増やす体制を強化。その一方で他国には保護削減を求めたわけで、各国からの批判は必至とされる。
全中会長談話では、ウルグアイ・ラウンド農業合意は重要課題に適切に対処できなかったと前置きし「米国政府は、各国農業の様々な状況を無視して大幅な関税削減などを提案したと伝えられるが、これは自国の大規模な企業的農業者への保護拡大を正当化する」ものであると批判した。