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農政・農協ニュース

日ハムが検品前に在庫牛肉を焼却 (8/8)

 牛海綿状脳症(BSE)対策事業で、いったん買い上げ契約を結んだ牛肉を、検査を前に買い戻した食肉業者が9社あり、うち大手の日本ハム(株)は解約分をいち早く焼却していたことが判明。農水省は不信を招く行為であるとして30日、作為の有無などを厳しく調査すると発表した。
 全頭検査以前の在庫を処分する同事業は業界団体が業者から買い取り、農畜産振興事業団に申請して国の補助金を受ける仕組み。国は補助対象外の肉の有無を全箱検査で調べている。
 その中で、6月末には九州大手の日本食品(株)が牛のアキレス腱を国産牛肉に偽装して買い取らせ、1億3660万円をだまし取った疑いが発覚した。
 今回は日本ハム・ソーセージ工業協同組合の会員9社が計7・8トンの買い上げ契約解除を求めた。理由は業界の自主検査の結果、2年間の品質保持期限が切れた補助対象外の肉とわかったためだという。
 このため同組合は6月14日、解約分の補助金辞退を事業団に申請した。
 事業団は農水省と協議。、日本食品事件を受け、これまで以上に全箱検査を受ける必要性が高まっているとして申請は到底認められないと取り下げを指導した。 ところが同組合は7月12日に9社からの買い取りを解約したから、申請を承認してほしいと、18日付けで再度要請してきた。しかも「25日までに承認を」と日限つきだった。
 驚いた農水省は、承認なしの解約は「事業団の事業助成実施要綱に違反する」として同組合に解約の取り消しを強く指導した。
 ところが日本ハムの場合は大阪などの倉庫に保管していた解約分の1・3トン(3ロット)を未検査のまま、すでに焼却処分していた。しかし残りの8社6・5トン分については焼却をストップさせた。
 事態の性格は「検査逃れ」「偽装の隠蔽工作」ともとられかねないが、日ハムは「そうではない」とし▽解約されたから承認されたと思った▽焼却は組合の指導によるなどとしている。
 また組合は「補助対象でない肉を保管しているとコスト負担が重くなる」から焼却処分を急ぐ必要があったなどという。しかし組合の理事長は日ハムの大社義規会長だ。組合加盟は全国約170社。
 事業の助成実施要綱違反に罰則はないが、農水省は「焼却に事業悪用の意図がなかったにしても要綱違反で、ほかの(買い上げ申請)分の補助金を減額するといった処分ができる。雪印食品の場合はそうした。今後、ほんとに品質期限切れだったのかどうかを検証する」(食肉鶏卵課)という。  また作為の有無なども追及するが、当面は社名の公表で社会的なペナルティを課したとのことだ。
 組合に対しては無断解約に至った経過などを調査し、事業適正化に向けた改善報告などを求める。
 牛肉在庫を買い上げ、市場から隔離して保管する事業の国の予算は212億円。雪印食品の偽装事件から、検査は「全ロット検査」になり、さらに厳しく現在の「全箱検査」となった。 買い取り実施は6団体。詐欺容疑の日本食品からは全国食肉事業協同組合連合会(全肉連)が買い取った。その後、日本食品は補助金返還を申し出たのに全肉連は国に報告しなかったというケースもある。
 このため農水省は6団体に改めて今回のようなことがないよう指導する。


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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