「他社に後れをとらないように(我が社も偽装を)やらなければ」「よそもいろいろやっている(我が社も)損をしないようにやってくれ」。これは雪印食品の部長と元専務・桜田弘巳被告の会話で、BSE対策の牛肉買い上げ補助制度の悪用を詐欺罪で起訴した検察側冒頭陳述の一コマだ。 「偽装肉を申請するのは業界では当たり前のように話されていた」と同社の調査委員会委員長を務めた加毛修弁護士は「複数の社員の打ち明け」話を紹介している(朝日新聞から)。同氏は「一部の企業だけがスケーブゴートにされるのは不公平だ」とし、事件の背景や行政運営の問題点を総括する必要があると指摘した(同紙から)。
確かに同社の後にも日本食品(株)(九州大手)、日本ハムと発覚が相次いだ。
コトは食肉だけでなく例えば20日には韓国産のカキを宮城県産と偽っていた同県の16業者が、県から名前を公表されるなど水産物も含めて食への信頼は揺らぎ続けている。
企業倫理を問えばモラルハザードは食品業界だけでなく、銀行・保険をはじめ、あらゆる分野に腐食構造がみられる。しかしJAグループとしてはまず食品関連会社のモラル確立が切実な願いとなる。農薬づけの中国野菜を開発輸入する商社の倫理なども含まれる。
日本ハムの場合は「売上げ追求が強すぎた」企業風土の刷新を目ざし、また監査部を設けて法令順守を徹底するとのことだ。
そして事業部制の分権化による閉鎖体質を反省し、横断的にグループを監督する改革推進本部を設け、透明性のある連結経営を実現する。内部告発については全従業員から意見を受け付ける窓口をつくり、さらに品質保証部を新設した。
大社社長は、こうした体制による「日常の企業活動で信頼回復を図り、新社長のもとで新生日ハムを再生させたい」という。
雪印も日ハムもJAグループと関係のある会社だ。一日も早く再建策の実効をあげることが求められる。