規制を緩和または撤廃する地域を設定して経済活性化につなげようという「構造改革特区」の名乗りを挙げた地方提案の中には、農地法の耕作者主義を否定しかねないなど重大な問題をはらむものがあるとしてJA全中は、全国段階だけでなく、特に県段階の対応が重要として都道府県中央会会長会議にはかって対応していくことを5日の理事会で決めた。
政府は地方提案を8月30日に締め切り、来月上旬に特区推進のプログラムを決めた後、秋の臨時国会に法案を提出する予定。
全中は内閣官房への地方提案状況を集約中だが、4日現在のまとめでは農振法など農業関係法の規制緩和を求める提案が目立つ。
農業法令以外でも例えば▽農家民宿で客に飲ませる酒づくりは酒税法の適用を除外する▽許可のいらない開発を市街化調整区域で拡大するため都市計画法の規制緩和を、といった農家にかかわる提案が多い。
農地法と農業生産法人については農外企業の農地取得と農業経営参入を求める提案が島根県など1県3町から出たが、全中理事会では、はっきり「認めることはできない」とした。
理由としては▽家族農業を基本とする耕作者主義の否定▽水管理など集落機能の弱体化▽事業撤退による農地荒廃▽農外資本による経営支配▽農地の投機的取得などにつながる懸念や疑問があるという。
一方、借地方式に限定した参入については、その是非を検討するとした。
このほか▽農家民宿は旅館業法の適用を除外する▽任意の集落営農組織を認定農業者制度の対象とする、といった提案はさらに「精査」が必要とし、内閣官房での検討を中止していく。