11月1日に開かれた第9回生産調整に関する研究会に食糧庁はメリット対策や経営安定対策についての考え方などの案を示したが、いずれも前回示した国による生産調整の配分廃止を前提とした改革案をふまえたうえで、各種対策の導入目標年次を掲げたものであったことから、JAグループ委員からは前回に引き続き反発の声が強く上がった。
「具体策を議論するなかで目標年次は決まってくるはず。最初に配分廃止ありきという感じだ」(門傳英慈JA全青協会長)、「配分をいつ廃止するのかという議論が先行していることに非常に違和感を感じる。この案が今生産調整に取り組んでいる現場にどれだけの混乱をもたらしているか。もっと優しさがあっていいはず。白紙撤回してもらいたい」(岡阿彌靖正JA全農専務)などの意見が相次いで出され、山田俊男JA全中専務は「国が(生産調整などから)手を引くという印象を間違いなく与える提案。具体策の議論に入りたいのはやまやまだが、目標年次を示した改革ステップ論は認められない」と生源寺眞一座長に食糧庁案の扱いについて判断を求めた。
これに対し生源寺座長は、白紙撤回はあり得ないとし、改革に向けた施策や農業者の取組みの問題と「実現に要する期間の設定の問題を一体のものとして議論をすすめたい」と、食糧庁案を検討の素材として議論を進める考えを示した。
そのうえで、16年度から国による生産調整配分を廃止する第1類型は除外し、一定の期間を置いて改革を進める第2、第3類型を念頭に置いて議論すべきではないかとした。また、検討項目として(1)助成措置の内容と生産調整の実施主体、達成要件、(2)担い手への経営所得安定対策、(3)過剰米処理策、(4)流通制度改革、(5)その他、の5項目とすることが提案され、具体策の議論に入った。
全体研究会で改革方向を検討
11月7日に開かれた第10回全体研究会では、過剰米対策や当面の経営所得安定対策、食糧庁案に示された安定契約生産者の位置づけなどについて議論した。しかし、この日も具体策の議論の前に国の役割や、目標年次を念頭した案についての異論が出された。
JAグループの主張と食糧庁の改革案でもっとも食い違うのが、いずれは生産調整について国は関与しないことを示したことにある。国の関与がなくなることを前提にした議論は、食糧法改正議論の際、作る自由、売る自由の喧伝によって現場に混乱をもたらしたのと同じような事態を生むという懸念がある。
しかも国による生産調整の配分廃止案は、かりに農業者団体が自主的な生産調整を行ったとしてもメリット策は実施しないという構想案となっていることから、国の役割を明確にすべきという主張とは、まさに議論の“入り口”で対立することになった。
この点について生源寺座長は7日の研究会後の記者会見で、生産調整について(1)現状のままの生産調整、(2)国は関与するが副作用が少なく強制感もない新たな手法、(3)国の関与はなく生産者団体による生産調整の実施、(4)生産調整そのものを行わない、と4つの段階が想定できるとして「JAグループも現状のままではいいとは考えておらず、この想定で言う(2)までは合意できていると思う。問題は(2)から(3)にいかにして移行するか」で意見の対立があるとの見方を示した。
生源寺座長は(2)について、「たとえば、前年の売れ行きが翌年の生産量に結びつけられるような方法」と語り市場シグナルに対応した需給調整へ転換する段階だと説明。
また、(3)についての論点は、JAグループなどは国が関与しなくなれば過剰になって米価は暴落するとしていることから「国が直接関与しなくなったとしても、すべて生産者に任せられるのかどうか」などを上げたが、一方で生産者が一斉に米づくりにシフトしないような環境整備も求められるとした。また、改革の目標年次の設定は「研究会が自らに課した宿題」との認識も示した。
研究会は、当初、13日の全体研究会で改革の方向を議論し、その後、企画部会で改革案の起草を行い、再度全体研究会で詰めて29日に最終的なとりまとめを行う予定だったが、これを変更し、13日にはこれまでの意見の概要を集約し引き続き議論、15日の全体研究会で意見集約のため議論をすることになり、改革の大枠についての姿は「できるだけ全体研究会でまとめたい」との意向を生源寺座長は語った。その後に企画部会での議論が必要かどうかを検討するという。
配分廃止後もメリット措置実施は選択肢になり得る――渡辺事務次官
農水省の渡辺好明事務次官は、7日の記者会見で近く米改革についてJAグループ代表に農水省側の考え方を伝える方針を語った。
「現状のままでいいわけがないという共通認識は同じだったが、出口が違うようだ。誤解もあり真意はどこにあるか説明したい。生産調整から国が手を引くとの報道があるが、手を引くわけではなく国としてやるべき範囲を示していること」という。
また、生産調整実施のメリット措置について、将来的に国による生産調整配分を廃止し、生産者団体が自主的に実施することになった場合でも、「メリット措置(の実施)と配分廃止は切り離して考えることもあり得る」と語った。現在、提案されている食糧庁案では生産調整の配分廃止になればメリット措置は講じないという方向になっている。