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農政・農協ニュース

今こそ「ふるさと」見直そう
100万人の回帰運動
―日生協・JA全中など― (11/2)

ふるさと回帰運動のシンポジウム=2日、東京・虎ノ門パストラル
ふるさと回帰運動のシンポジウム=2日、東京・虎ノ門パストラル

 殺伐とした大都会を見限って自然豊かな地方で暮らそうという「100万人のふるさと回帰・循環運動」を日生協、連合、JA全中などが始めた。過疎や高齢化に悩む農山村の活性化もねらって、呼びかけ団体は2日、田舎の生活を求める人々を支援するNPO(非営利法人)として「ふるさと回帰支援センター」を設立。理事長に作家の立松和平氏を選び、3年をめどに都道府県ごとの支援センター設立を目ざすなどの事業計画を決めた。
 各センターは自治体、連合、生協、JAなどで構成しセンター間ではネットワークを構築。将来は全自治体にセンターをつくる。当面は全国7ほどでモデル事業を実施する。立ち上げ資金は参加団体が持ち寄って計1000万円。
 東京のような首都圏一極集中は世界一の異常な過密現象だが、それを緩和する運動としても注目される。
 センター設立記念のシンポジウムでは▽首都圏は化け物のように巨大だ▽私たちの文化はコンクリートから生まれない、といった大都会生活への嫌悪から「原風景の白砂青松が消滅したから生まれ故郷にはもう帰りたくない。よその県に心のふるさとを求めている」といった慨嘆もあった。
 回帰を進めるには、受け入れ側の環境保全も当然、必要となる。これに関連してJA全中の山田俊男専務は「田舎といっても今は例えば美観を損なう看板だらけ。回帰する都会人は美しい自然を取り戻すコーディネ―ターになっていただきたい」と提起した。
 
 また、この回帰の運動が成熟してくれば、JRや私鉄の各沿線ごとに農業研修の場や農園の情報を知らせるセンターをつくり、沿線の各JAもネットワークで農業塾を整備するなどの工夫をしたい、と語った。
 同じくパネリストで参加した女優の高橋恵子さんは「都会人が田舎へ行って生活しようと思っても農業のことを教えて下さるプロがいないと困る」とし、小中学生の農業体験も、もっと広げてほしいと求めた。
 和歌山県の木村良樹知事は「荒れている県内の山を整備するため緑の雇用事業というのを起こし、都会人に森林組合の仕事を手助けしてもらっているが、雇用期間半年限りにもかかわらず、大阪などから650人も求職があった。期間を長くすれば何千人もくるのではないか」と語った。
 シンポでは、Uターンした都会人が農業の担い手になるのは技術的にも困難だが、都会で働いて身につけたビジネスのノウハウを田舎に持ち込んで担い手たちを支えるという役割は日本農業に大きく寄与するとの意義の強調もあった。
 基調講演では立松さんが「兵隊から復員した父にはふるさと(宇都宮)の自然があった。山河があったから生きることができた。戦後はゼロからの出発ではなかった。国敗れて山河ありだった。ところが今、ふるさとの山河が危ない」と情感をこめて自然とふれあう運動の意義を訴えた。
 最後にシンポの参加者一同として「この運動はまさに歴史的な新たな価値観の創造のための運動です」というアピールを採択した。



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