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農政.農協ニュース

農薬への疑念など追求
食の安全・安心でシンポジウム (12/5)

「食料・農林漁業・環境フォーラム」のシンポジウム=11月30日、東京・有楽町のよみうりホール
「食料・農林漁業・環境フォーラム」のシンポジウム=11月30日、東京・有楽町のよみうりホール
 食品安全への信頼が大きく揺らいでいる中で生産・流通・消費を結ぶ新たな信頼関係を考えるシンポジウムを「食料・農林漁業・環境フォーラム」(代表、木村尚三郎東大名誉教授)が30日、都内で開き、約1000人が参加。「消費者が求める安全・安心とは何か」を追求した。
 「有機農産物や無農薬栽培なら安全というが、それなら農薬を使う慣行栽培は安全でないのか。消費者はそこに疑念を持っている」とパネリストの見城美枝子青森大学教授は基本的な疑問を投げかけ、梅津準士・食品安全委員会(仮)設立等準備室副室長(内閣府)は体内に蓄積されても影響のない農薬成分の許容量などを説明した。
挨拶する木村尚三郎東大名誉教授
挨拶する木村尚三郎東大名誉教授
 また生産者の猪野正子さん(栃木県・専業農家)は「農薬は基準内の使用なら安全だということを確認してほしい。しかし消費者はそれ以上のものを求めるから有機や無農薬のものが作られている」と述べた。
 さらに「フードプラン」という独自ブランド品の生産と供給をコーディネートしているコープこうべの迫田節子さんは「環境や農薬をまく人の問題も広く考えて、人と自然にやさしい食べ物づくりを求めている」とし、フードプランの厳しいガイドラインは慣行栽培を危険視したものではないと報告した。
 流通面ではイオン(株)農産商品開発部の高橋博部長が契約栽培について「農薬の使い方などで独自に規範を作り、第三者がチェックしている」と語った。
 また東大大学院の中嶋康博助教授は無登録農薬問題について「失効した農薬を知らずに使う農家もあり、故意というよりは無理解からの使用が多い」などの問題点を指摘した。
 司会の岸康彦さん(日本農業研究所研究員)は生産履歴の記帳などJAグループの運動を紹介しながら議論を進行させた。
 会場からは生産者から▽農薬使用に過敏になるのは国産品の将来によくない▽輸入品のポストハーベスト問題も併せて考えよう▽慣行栽培から減農薬栽培などへ踏み出しても市場価格は同じで、評価されない、などの意見や報告が出た。
「食料・農林漁業・環境フォーラム」のシンポジウム=11月30日、東京・有楽町のよみうりホール
「食料・農林漁業・環境フォーラム」のシンポジウム=11月30日、東京・有楽町のよみうりホール
 消費者からは「評価は消費者の行動で示される。人件費のかかった作物には、それに見合う価格を支払うのが当然だ」などの発言があった。
 生産履歴を追跡できるトレーサビリティについては高橋さんが「いつ、どんな農薬を使ったかまでを消費者が知りたがっているのかどうか疑問だ。店頭では最低限の情報提供だけでよいと思う。しかし供給側としてはお客が必要とした情報をいつでも出せるようにしておく必要がある。トレーサビリティシステムは企業だけの課題ではなく社会的インフラとして必要だ」と述べた。
 このあと議論は「味」の問題に及び「昔の味」を伝えていく点で有機栽培、土づくり、栽培技術などが話題となった。
 なお、このシンポは会場の聴衆が賛否のボタンを押せば、その結果がすぐスクリーンに示されるシステムを使い、またビデオの映像を多用して、わかりやすい演出を試みた。


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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