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農政.農協ニュース

WTO農業交渉 MA米削減主張に厳しい評価
議長が交渉の概観文書を提出
日本、公正なルール確立を主張 (12/18)

 WTO(世界貿易機関)のハービンソン農業委員会議長は12月18日、農業交渉についての現状と今後の論点をまとめた概観文書(ペーパー)を加盟国に公表した。
 同文書には日本の主張も切り捨てられることなく盛り込まれているが、米国、ケアンズの主張も記されているほか、多くの国がミニマム・アクセス輸入数量については、拡大が不可欠と主張している、などと一部の項目では日本にとって厳しい評価も示されており、交渉の行方に楽観視は許されない状況だ。
 政府は交渉が決着したわけではないことから、EUなどとの「協調、共闘しながら日本の主張の実現をめざす」(渡辺農水事務次官)としている。
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 同文書は今後の交渉の範囲や内容、結果を予断するものではないと明記されており、日本政府も各国の主張を網羅的、公平に盛り込んだとみている。
 しかし、項目によっては多数意見と少数意見に分かれることを指摘した整理となっているほか、議長として、各国の合意は得られていないものの、すでに幅広い支持があるとの評価を示した項目もある。
 とくに日本政府が厳しい整理と受け止めているのが、米のミニマム・アクセス(最低輸入量)に関わる関税割当をめぐっての議論。
 同文書では「多くの加盟国はアクセス数量の拡大が市場アクセス改善に不可欠と主張している」と指摘した。一方、日本が主張している、ミニマム・アクセス数量を最新の消費量で算定し直すことや、関税化の遅れにともなう加重量を解消すべきとの意見も記されてはいるが、少数意見との扱いとなった。
 さらに、ハービンソン議長がモダリティ確立のためのとりあえずの作業仮説を示した附属表では、関税割当の項目は「拡大」をスタートラインとして設定してはどうか提案しており、日本はこの点がもっとも「厳しい議長の評価」(農水省)と受け止めている。
 ただし、ミニマム・アクセスに言及した部分では、この問題は「関税削減幅の問題と不可分」とも指摘した。
 すなわち、市場アクセス(国境措置)の問題は、関税全体の引き下げ方式やそれによる削減幅など、全体との兼ね合いで考えられるべきで、関税割当量のみだけ取り出して検討すべきではない、との主張もあることが記されている。
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 その関税引き下げ方式については、同文書は、米国やケアンズ・グループなどが主張している大幅削減となるスイス・フォーミュラと、品目ごとに削減幅の柔軟性が確保できるとして日本やEUなどが主張しているウルグアイ・ラウンド方式(UR方式)が対立しており、それぞれに幅広い支持があることを指摘している。
 そのうえで、スイス・フォーミュラを主張する国に対して、議長は非貿易的関心事項を反映させ、柔軟性を確保できるような修正案はないか、と質問を投げかけている。同時に、UR方式を主張する国に対しては、具体的な削減率の提案とハーモナイゼーションの達成(統一的な削減幅が実現するような方法)ができないか、と提案した。
 これらの質問に対して、日本政府としては「ハーモナイゼーションの達成は、関税削減の柔軟性が確保できない。そもそもUR方式の否定」(農水省)として受け入れられないとの立場。
 また、削減率など具体的数値を示せという要求も「ルールの議論を尽くさないで数字の議論を先行させるわけにはいかない」(同)というのが主張だ。
 同文書では、モダリティ確立に向けて、米国やケアンズ・グループが数値を示した案を示していることに対し、一方でこれに反対する日本やEUなどが数値を示さないため交渉の進展を難しくしている、との指摘もある。
 これに対しては「輸出国なら自国に有利な数字を出すのは当然。また、ミニマム・アクセスの拡大は必要がないという国や態度を明確にしていない国もある。一方的に議論するのはおかしい」(農水省)として、現行の貿易制度の問題点を指摘しルール確立が先行との主張をしていくという。来年1月には農業委員会特別会合が開催されるが、その場で改めて日本として今回の議長文書への評価を表明する方針だ。
 ハービンソン議長は同文書の最後で「政治的な決定をすべき時期」としている。しかし、どう見ても農業交渉だけ政治的な決断が迫られるほど、議論し尽くされたという状況にはない。政府はあくまで日本の主張実現に向けて努力すべきだ。
<スイス・フォーミュラ>  東京ラウンド(1973年から79年)の際に、鉱工業品の関税引き下げで採用された方式。今交渉での米国、ケアンズの提案では、すべての品目の関税率は25%未満になる。この方式の提案自体、農工一体論に基づくものといえる。


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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