大島農相は、1月31日の記者会見でEUのモダリティ提案のうち、関税の削減水準など数値を盛り込んだ主要3分野の案について「支持可能である」と表明した。
EUのモダリティー提案では、関税の引き下げについては品目ごとの柔軟性が確保できるウルグアイ・ラウンド方式を主張しており、その削減水準を「6年間(先進国)で平均36%、1品目最低15%」と提案。
また、国内支持については総合AMS(国内農業助成合計額)方式により、「2000年度の約束水準から6年間(先進国)で55%削減」を提案している。輸出補助金については、金額ベースで「6年間で45%削減」としている。
大島農相が「支持可能」としたのはこの3分野について。「米国やケアンズ・グループの極端で非現実的な主張」(同農相)に対抗していくには、EUとの連携が必要とし「(農産物貿易ルールについて)基本的な理念が同じであれば許容できる数字」と判断した。
また、農相はこの水準を「ぎりぎりの線と考えている」と述べ、今後の交渉でより厳しい要求が出てもこの提案の「実現を全力でめざす」と語った。
EU案への支持を表明したことで日本としても「数値」を示したことになる。EU、米国など関係国にも通知する。
この時期に数値を示したことについて農相は、東京での非公式ミニ閣僚会議が迫っていること、ミニ閣僚会議前にモダリティ第一次案が示されるとされていることから、明確に示すことが必要だと判断したという。
この提案が実現した場合、米の2次関税率削減水準を最低の15%とすると、新たな貿易ルール決定後6年後には、現行の1kg341円が289円に引き下げられることになる。ちなみに主食用として輸入される米(売買同時入札制度による輸入)では、わが国は現在、1kg176円から196円程度のマークアップ(輸入差益)が上乗せされている。
ただ、今回、日本が支持可能としたのはEU提案のうち主要3分野についてのみ。MA制度やデミニマス(削減対象外とする最低限の政策)など、EUと主張が異なる点についてまで同意したのではなく、MA制度の見直しなどについては日本のモダリティ提案に基づき主張していく。
農相の表明を受けて、JA全中の宮田勇会長は「農業の多面的機能と食料安全保障等の非貿易的関心事項がさらに配慮されるべきであるが、断じて容認できない米国やケアンズ・グループの主張に対抗していく上でも、EUとの連携を重視した大臣の表明は賛同できる」、「われわれにとって極めて重要な課題であるMA制度の是正については非貿易的関心事項が適切に反映されるよう取り組みを強める」との談話を発表した。