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今こそ教育文化活動を強め「協同の心」でJAに結集を
第45回記念全国家の光大会開く (2/5)

−4JAが家の光文化賞に輝く−
 体験発表では農林水産大臣賞に小山田フミさん
 JA全中会長賞に星野房枝さん

4JAが家の光文化賞に輝く
4JAが家の光文化賞に輝く

 第45回記念全国家の光大会は2月4日、横浜市のパシフィコ横浜で開き、約2400人が参加。JA教育文化活動のいっそうの活性化をはかり、JAへの結集力を高めることをめざして「人が元気・組織が元気・地域が元気」の「輪をひろげ」ていこうという「元気宣言」を採択した。第53回家の光文化賞に輝いた宮城県のJA栗っこ、山口県のJA豊関、愛媛県のJAえひめ南、福岡県のJAにじを表彰。また体験発表では記事活用の部の農水大臣賞には岩手県・JA盛岡市の小山田フミさん、普及・文化活動の部のJA全中会長賞には福岡県・JAにじの星野房枝さんが選ばれた。
 前日の3日に都道府県代表62人の体験発表があり、そこで選ばれた記事活用報告の6人と、普及・文化活動報告の3人が、この日の全国大会で発表した。
 その内容は『家の光』の記事を活用した▽食の安全安心▽地産地消▽環境▽助け合い▽学童農園づくり▽グループづくり▽女性参画▽家計簿記帳など様々な活動に及び、参加者の貴重な体験交流となった。それぞれの地域へ持ち帰っての教育文化活動の発展が期待される。
 また『家の光』は▽元気がもらえる本▽生涯の座右の書▽人生を楽しむためのツール、などといった個人的な思いなども語られた。

体験発表の受賞者
体験発表の受賞者

 藤谷築次審査委員長(京都大学名誉教授)は小山田さんの発表について、「リンゴの栽培技術を指導するシニアボランティアとしてアルゼンチンに渡った夫と共に現地で活動したことは、国際化時代にふさわしい農業者夫婦の新しいライフスタイルを示した。フミさんは日系人たちを集めて寄合塾という場を開き、『家の光』を活用して日本文化の再確認をしたが、私はここに記事活用の原点があると判断した。切実なニーズを踏まえれば、いかようにも記事活用ができるというものだ」と評価した。
 審査委員会では奈良・JAならけんの高松久仁子さんの発表も意欲的な酪農経営の取り組みとして注目され、決選投票の結果、小山田さんが大臣賞に輝いた。
 JA全中会長賞の星野さんについては「教育文化活動を起こし、家の光事業を推進するにはどうすればよいかという戦略的な取り組み手法を全面的に考えて構築。それを実践して見事な成果を収めた。すべてのJAが学び取ってほしい点ばかりだ」との講評だった。
 また藤谷委員長は「協同組合とは何ぞやという基本が忘れられかけているが、基本を見詰め直すことなしにJA運動の将来はない。その意味でJAの教育文化活動と、それを支える家の光事業への真剣な取り組みが、そのカギを握っていると痛感した」との所感も語った。
 表彰を受けた後、小山田さんは「アルゼンチンに2年いて10年くらいの苦労をしたという感じでしたが、そのすべてが、きょう吹っ飛びました」と喜び、星野さんは「きょうが新たな出発点だと実感しています」との決意を示した。
 大会では(社)家の光協会の佐藤晴登副会長(JA山形中央会会長)があいさつの中で「今こそ、家庭で、地域で『協同の心』を培い、JAに結集することの意義が改めて見直されている」と強調。そのためには「教育広報活動の強化と、魅力あるJA事業活動を進めるための生活文化活動の活性化が必要不可欠」と語った。
 来賓祝辞ではJA全中の宮田勇会長が情勢を述べた後「家の光の各誌は創刊以来、全国に深く根を下ろし、文化の灯をともし続け、様々な教育文化活動を通じて地域振興に大きな役割を果たしてきた」と評価。今後の家の光事業の取り組みと役割に期待を表明した。
 JA神奈川中央会の麻生文雄会長は地元としての大会歓迎の祝辞を述べた。祝電では国際協同組合連盟(ICA)会長のメッセージが披露された。
 次いで家の光文化賞を受けた4JAの表彰式と平成14年度JA普及実績表彰があり、その栄誉を讃えた。
 体験発表後には『ちゃぐりん』愛読者特別発表として沖縄県玉城村立船越小学校5年の花城美沙姫ちゃん(JAおきなわ玉城支店管内)が『ちゃぐりん』の記事から得た知識をもとに環境悪化に対する問題意識を声を張り上げて語り、満場をわかせた。
由紀さおり・安田祥子姉妹の童謡コンサート
由紀さおり・安田祥子姉妹の童謡コンサート
 午後は「感謝の集い」として由紀さおり・安田祥子の童謡コンサートを楽しんだ。童謡のほか姉妹ならではの懐かしくて美しい日本の歌の数々を歌い、会場のリクエストにもたっぷり応えた。地元のJA横浜南女性部コーラスも出演し、きれいなハーモニーを聞かせたあと、女性部員たちと姉妹のトークで笑わせた。
 このあと体験発表の6人に家の光協会会長特別賞が贈られ、さらに、その中から農水大臣賞とJA全中会長賞を選んだ審査講評と結果発表があり、受賞者2人が表彰された。
 続いて出席者一同が「元気宣言」をした。

◆ 家の光文化賞受賞4JAの共通点

 家の光文化賞は、教育文化活動が創意工夫に富み、家の光事業がJAの事業・活動の中で明確に位置づけられ、成果をあげているJAを顕彰するもので、昭和24年に制定された。
 今年の受賞4組合について審査委員長の川野重任・東大名誉教授は審査講評で「(JA合併による)広域化のもたらす利点を積極的に生かす一方、伴いがちな不利(組合員意識の不統一、弱体化など)に対しては懸命な教育活動、組織整備活動などを続け、とくに個性的な組合長の主体的行動様式の重要性が注目をひいた」と共通点を挙げた。
 また家の光文化賞促進賞は、福島県のJA新ふくしま、岐阜県のJA東美濃、京都府のJA京都やましろが受賞した。

◆地球の裏側で『家の光』に出会う

 農水大臣賞を受賞した小山田フミさんの体験発表
 「移住花嫁と『家の光』との出合い」(要約)

小山田さん
小山田さん

 リンゴの果樹園を経営していますが、農家にも定年があってよいと娘夫婦に後を託し、老夫婦は定年後を海外ボランティアとしてアルゼンチンの日系移住者にリンゴ栽培を指導することになり、現地へ渡りました。
 移住民30家族のコミュニケーションを図るため私は自分のアパートを寄合塾という場にしました。
 集まってきた人たちは、それぞれの特技を教え合うことになり、一人の移住花嫁は料理講習会の講師として豆腐作りを教えました。
 そのレシピがなんと『家の光』のものだったことにびっくり。地球の裏側のパタバゴニアの大地で『家の光』に出会えるとは思いもよらなかったので聞いてみると、日本へ嫁にいった二世が送ってくるとのことでした。
 それは船便で三カ月かかって母のもとに届き、家族みんなで回し読みしているといいます。
 しかし現地には日本のような食材がないので、レシピとは違ったにがりなどを工夫して作りました。それなりに「おいしい」といいますと移住花嫁は「気に入ったのなら小山田さんが生きているうちはお宅へ届けます」というので「生きているうち」とはヘンな日本語の使い方だと思いました。
 そのうちにアルゼンチン経済の崩壊で犯罪が増え、日系人たちも命にかかわる被害を受けている中での表現だとわかりました。私がにわかに日本舞踊を教えた70歳の男性は強盗に手首の切断に追い込まれ、扇子を初めて持った右手が失われました。
 やがて、この地方の大きな移民祭で日本文化を披露してほしいとの出場依頼が寄合塾にきました。17カ国の民族が参加する行事ですが、日系人には初めての依頼でした。
 しかし日本文化の記事を載せている『家の光』があるのだから、がんばってみようと決め、移住花嫁が持っていた着物姿で日本舞踊を披露し大喝采でした。展示コーナーには日本農業の本として『家の光』を置きました。
 2年間の現地生活で私を支え、安らぎを与えてくれたのは『家の光』でした。


◆普及推進で女性部生き生き

 JA全中会長賞を受賞した星野房枝さんの体験発表
 「なな色の夢が輝くJAにじへ」(要約)

星野さん
星野さん

 JA運動を発展させるためには、『家の光』の普及と活用が必要不可欠であるという信念を持って取り組んでいます。しかし長年、普及推進をJA女性部だけに依存してきたために、部員の減少とともに普及率が22%にまで落ち込んでいました。
 JAの生活指導員である私は、そもそも『家の光』は女性部だけのものではなく組合員、職員、地域住民が農業と農村社会を理解し、協同の精神を培うための教育資材であると考え、JA職員が率先して普及に努めるべきだと提起しました。
 しかし、それを職員一人ひとりに理解してもらうことは簡単ではありませんでした。生活課の中で普及運動を提案し、協議を続けるうちに、トップの理解を得ることが重要だと考え、組合長のもとに出かけました。
 組合長からは「役職員が一体となって取り組まんといかん」という言葉が返ってきました。その後、推進要領をつくるにあたって、常務から、女性部と支所長全員で先進JAを視察したらどうかとのアドバイスを受け、山口県のJA豊関へ行き、『家の光』の普及運動は協同組合運動そのものだというJAの姿勢を実感することができました。
 そうした結果、推進は成果を挙げ、女性部員全員の購読を達成しました。『ちゃぐりん』の普及はフレッシュミズに呼びかけ、また小学校にも置きました。
 女性部活動も生き生きとしてきたと感じられます。『家の光』の記事を活用した勉強会を毎月開いており、愛読者と地域住民を対象にした「家の光グループ」もできました。
 女性参画では正組合員加入運動にも取り組み、11%だった加入率が18.5%にまで伸びました。
 こうした成果からJAにじとしては今回、家の光文化賞を受賞しました。
 
 ◆いつもそばにいてくれる『ちゃぐりん』

 花城美沙姫ちゃんの『ちゃぐりん』愛読者特別発表(要約)

花城美沙姫ちゃん
花城美沙姫ちゃん

 『ちゃぐりん』の記事の中で、ゴミを減らすために大活躍をしている生き物ミミズくんのことを知りました。それをきっかけに環境やゴミ問題に興味を持つようになりました。
 ミミズには枯葉の下にすむ種類、土の下の深いところにすむ種類もありますが、生ゴミを食べてくれる種類もあります。そのフンが栄養価たっぷりの肥料になって、野菜作りにはミミズが欠かせないパートナーなんだと『ちゃぐりん』を読んで思いました。
 そんな時に私の住んでいる玉城村に、ゴミの最終処分場が建設されるという計画を知りました。
 それで私は建設予定地の近くにすんでいる人に話を聞きました。その人は最終処分場の影響に危険を感じているといいます。
 ゴミ焼却で燃え残った灰のかたまりなどは埋め立てに使われますが、その影響は10年20年たたないとわからないとのことです。
 予定地の周辺には、たくさんの畑があって、地下水も豊富です。地下水が汚染されたら農業をやっていけるのかどうか心配です。
 公害を防ぐためにはゴミを減らさないといけません。またミミズくんにとってもすみやすい環境をつくってあげることが、自然にやさしい生き方だと思います。
 ミミズが人間の役に立つ地球にやさしい生き物だとわかったのは『ちゃぐりん』のおかげです。 (2003.2.12)



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