JA全中は、秋に開くJA全国大会議案の骨格を2月19日のJA改革推進会議に示した。基本方針を信頼、貢献、改革の3点にくくり、実施事項の重点的テーマを「安全・安心な農産物の提供と地域農業・農村の活性化」「JAグループ一体となった経営改革の実践」の2本柱とした。
安全・安心では「生産工程管理・記帳運動」を展開。品質管理と情報公開の徹底を図る。まず生産基準を設定、これに基づく記帳をして“出口”では、生産物の分別出荷をする。環境保全型、資源循環型の農業を推進する方針も掲げた。
また国産農産物への信頼を高めながら食料自給率の向上へ向け、自治体に条例の策定を働きかける。
地域農業振興では「売れる農産物づくり」に取り組み、「誰に売るか」を明確にするなどのマーケティング戦略構築を進める。
具体的には市場出荷のほか、量販店や生協、中食・加工業者などとの相対取引を共販として広げる。また直売所の設置などで高齢者や女性の生産物の販売先を確保する。
多様な販売チャネルに基づく営農指導を展開。これに対応できるよう販売先や販売形態に応じて生産部会などの組織を再編する。
水田農業の構造改革を目指す方向は、コメ政策改革に対応し、地域ごとに「売れる量」を作る生産調整に転換。また「地域水田農業ビジョン」をJAと関係団体と市町村が一体となって策定し実践する。
集落や地区でビジョンを実践する主体を「水田営農実践組合」とし、3年間で全水田地域で同組合をつくる。組合は担い手への農地利用集積や麦・大豆の本作化などに取り組む。
「JA米」という新たな観点も打ち出した。JAグループがきちんと品質管理した安全安心なコメを「JA米」と位置づけて売る。シール活用などの手法も検討。ほかのコメとの区分を明確にする。JA米の要件は▽種子更新率と農産物検査受検ともに100%▽栽培暦に基づく栽培履歴の記帳をしたものとする。
JA米生産を軸に全JAの生産者が記帳を実施し、トレーサビリティシステムの確立を図る。
残留農薬の検査などはJAグループ自らも検査体制の確立を進める。
多様な生産者との契約では全体として仮渡金や最終精算の格差など選択肢を拡大する。これにはJA米や品質などによる区分契約も含まれる。連合会による直接集荷・販売も実施する。
一方、経営改革では、信用事業の利ざや縮小、経済事業の取扱高減少、共済事業の伸び率鈍化などから平成16年度にはJA全体の経常利益が2年度に比べて10分の1まで減少するとのシミュレーションなどを前提として示した。
そして従来型の事業量ではなく、事業利益を念頭に置いた経営管理手法の導入という改革方針を出した。
JAごとに場所別・部門別収支の確立に向けた経営改善目標や事業見直し、自己資本増強を含む改善計画を策定する。要員計画では3カ年で10%程度の人員を削減する方向だ。
経済事業では「選択と集中」を進め、事業の専門性発揮には別会社化などを含めた事業のアウトソーシング(外部化)を図る。
また市場出荷から直接販売へと重点を転換する。▽地産地消による消費者への直売▽地域の量販店や外食産業への納入▽大都市の量販店などとの契約販売へとターゲットを移す。
これにともなって営農指導も重点化する。
JAは原則として輸入農産物を取り扱わないとの宣言をする運動も提起した。「JAブランド」は品質管理された安全安心な国産品であると明確にするため、それぞれのJAが宣言をする。輸入に頼らざるを得ない品目も多いため生鮮農産物とJAの加工品に限る。
生産資材コスト引き下げでは▽競合店に対抗できる弾力的な農家渡し価格の設定▽奨励金の価格算入の徹底▽定率の手数料方式を改め、競争条件に応じた手数料を設定する。
また大口価格の設定のほか、販売先や生産工程が統一された部会や集落営農集団には一括購入をすすめ、メリットを還元する。
物流合理化ではJA域内を越えた広域の拠点整備を進め1JA1拠点以下に整備する。
生活購買店舗、SS、LPガス事業は運営の外部委託や外部化を進める。
部門別損益の確立では、購買事業を生産と生活の部門に区分し、生産購買事業は「事業利益段階での収支均衡」、生活同は「純損益段階での収支均衡」を基本的な目標とする。(2003.2.27)