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農政.農協ニュース

「ハービンソン提案」撤回に取り組む
JA全中のWTO対策 (4/3)

 WTOは農業交渉の枠組み(モダリティ)がまとまらず、迷走中だが、関税の大幅引き下げなどを盛った農業委員会特別会合のハービンソン議長提案はまだ生きており、今後の展開によっては同案が再び交渉の土台になりかねないため、JA全中は4月3日の理事会で同案の撤回に取り組むことを決めた。
 白紙に戻した上で、その後の交渉は日本の主張を反映した新たなモダリティ案をベースにするようにと政府・国会へ要請。また海外の農業団体にも同様の取り組みを求めていく。
 ハービンソン案は米国など農産物輸出国の提案に非常に近く、各国が反対。そこで「改訂版」を提示したが、これも当初案とほぼ同じだったため、ほとんどの国が拒否した。米国などの輸出国は自由化を急速に進める立場から反対した。
 ウルグアイラウンド(UR)は「柔軟な」市場開放で合意したが、米国やケアンズ諸国(オーストラリアなど15カ国)などは今回の交渉を前に、この合意を振り捨てて「急激な」方式の市場開放(スイスフォーミュラ)を求めている。
 これに対し日本や欧州連合(EU)などWTO加盟国の半数75カ国は2月の農業会合で「柔軟な」UR方式の支持を表明した。
 このため全中理事会は75カ国の政府間会議を開き、米国・ケアンズ諸国への対抗軸をさらに強化するよう政府に働きかけることも決めた。75カ国以外に、柔軟で現実的なモダリティに賛同する国にも参加を呼びかけて対抗軸を拡大する考え方も打ち出した。
 UR農業交渉の時は「例外なき関税化」を明記したガット事務局長案を日本、カナダ、北欧諸国が拒否したが、これが撤回されていなかったために最終合意案(ダンケル・ペーパー)に引き継がれてしまったという苦い経験がある。
 今回もハービンソン提案をそのままにしておくと、いつの間にか、それが定着してしまう恐れがあるとして撤回の課題を掲げた。
 WTO交渉は医薬品アクセスや途上国対策など農業以外の分野でもスケジュール通りに進んでおらず、来年末までに決着させる目標は怪しくなっており、合意期限を延長すべきだとの観測まで出てきている。イラク戦争の影響もある。
 こうした見通し不透明の中でJAグループとしては「撤回」や「政府間会議の開催」などの取り組みを打ち出し、また5月初旬に南アフリカで開く国際農業生産者連盟執行委員会の時期に合わせて農業団体会議を開くよう検討している。
 なおJAグループ代表団は3月24日にハービンソン議長と会談し、各国が歩み寄れるようなモダリティ案の再提示を求めた。
 これに対し同議長は「交渉はすでに私の手を離れている。今後は加盟国自身が合意づくりのため努力すべきである」などと答えた。 (2003.4.8)


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