JA全中と全国農業者農政運動組織協議会は8月28日、「WTO農業交渉日本提案実現 全国代表者集会」を東京・日比谷公会堂で開いた。集会にはJA関係者など約2000人が参加。9月のWTO閣僚会議で日本は妥協することなく交渉し、農業の多面的機能など非貿易的関心事項への配慮を具体化することや、上限関税の設定に断固反対することなどの決議を採択、集会後はデモ行進し日本提案の実現を広く訴えた。
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開会のあいさつをする
宮田JA全農会長
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JA全中の宮田勇会長は開会のあいさつで「交渉は重大な局面を迎えているが、閣僚宣言案はわが国農業実態と日本提案をふまえると到底受け入れられない」と強調、「その最たるものが関税の上限設定」だと指摘し、「関税は各国の生産条件の格差を是正する唯一正当な手段。上限設定などもってのほか」と訴えた。
さらに関税割当拡大の考え方も「輸出国サイドの身勝手な提案」であり、農業の多面的機能や食料安全保障など非貿易的関心事項への配慮を求めた日本をはじめノルウエー、スイスの提案が記述されていない閣僚宣言案は「受け入れがたい内容で断固修正、撤回を求めていかなければならない」「どこかの国が勝ち、どこかが負けるのではなく各国の農業が共存できるような公平、公正なルールが必要」と強調した。
また、メキシコとの自由貿易協定(FTA)の締結では自給率が低い現状をふまえ多くの例外措置が必要だとした。
与党代表あいさつで自民党の中川昭一農林水産物貿易調査会会長は、閣僚宣言案には日本だけではなく多くの国が反対していることやEUの農業団体ですら反対していると指摘、農業分野は「さあ買えという商売だけの世界では解決できない。買いたい側が欲しい(買う)という体制をつくっていくべき」と語り、楽観を許す交渉ではないが「将来に禍根を残してはいけない」と強調した。
また、FTA交渉について、一部のマスコミの農業が交渉全体を妨げているとの論調に対して、「無知、あるいは意図的な報道だ」と批判、そうした報道と「闘っていかなくてはならない」と訴えると会場からは大きな拍手が沸いた。
公明党の井上義久幹事長代理は「輸入拡大が続けば安全な食の供給ができるのか、農業者だけでなく消費者にも理解してもらうことが重要だ」と指摘、また、保守新党の佐藤敬夫農林水産部会長は「交渉が難航しているのは農業が各国にとって重要だという証左。関税上限が設定されれば無秩序な輸入による影響は必至」だとして、日本提案の実現を求めると述べた。
また、友誼団体としてあいさつした「食料・農林漁業・環境フォーラム」の服部信司幹事長(東洋大学教授)は、米・EUの妥協案について「輸出補助金の規律などハービンソン議長案よりも緩くした。自分たちの利害に関する部分だけ緩くし、一方で関税上限の設定などを提案している。世界をリードするような国が提案することなのか」と批判、2つの巨大な陣営が連合するという「容易ならざる事態」と指摘したが、一方で生産者、消費者がそれぞれの持ち場で全力を尽くすことが問われており、各地で進んでいる生産者と消費者との連携は日本農業の維持、発展の基礎になる、と訴えた。 (2003.8.29)