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上限関税設定に反対 日本 スイスなど8か国と共同修正提案
−WTO閣僚会議  (9/12)

 
 メキシコのカンクンで9月10日から始まった第5回WTO(世界貿易機関)閣僚会議で日本は、スイス、台湾、韓国など8か国とともに11日(現地)、閣僚会議文書案に対する修正案を発表、WTO事務局に提出した。
 修正案は、閣僚会議文書案に「非貿易的関心事項に十分配慮」との文言を盛り込み、農業分野では上限関税の設定を規定した項目を全面的に削除、また、関税割当の拡大を求める規定も削除した内容となっている。国内支持、輸出規律の部分には修正はなく、市場アクセスに限った修正案とした。
 現地時間の11日午前、亀井農相ら9か国(日本、スイス、ノルウェー、台湾、韓国、アイスランド、ブルガリア、リヒテンシュタイン、イスラエル)の閣僚がそろって会見した。
 スイスのダイス経済大臣は9か国が食料純輸入国であることを強調。UR(ウルグアイ・ラウンド)合意で関税が唯一正当な農業保護手段とされており、一律の関税とする関税上限の設定は認められないこと、また、関税割当の拡大を「重要品目に画一的にあてはめるべきではない」と語った。
 亀井農相は「合意される枠組みは各国の生産条件の違いを前提とし、輸出入国間のバランスが十分に確保され、非貿易的関心事項を適切に反映することが不可欠」と語り「上限関税の設定と関税割当の拡大は輸入国に過重な負担を課すもので受け入れられない。漸進的な改革のためにはUR方式が必要」などと強調した。

 そのほか修正を求める理由として閣僚からは「厳しい気候条件と低い人口密度のなかで地域社会を維持していくには最低限の国内農業の維持が必要」(アイスランド)、「農業は工業と異なり構造調整に時間がかかる。改革は漸進的であるべき」(台湾)、「上限関税を設定すれば輸入国の農業は崩壊する。多様な農業の共存のためには現実的な目標が必要」(韓国)、「農業は自国の文化維持に関わる問題。農家が大幅に減少しており、これ以上の減少は地域の崩壊をまねく」(リヒテンシュタイン)などの考えが強調された。

 閣僚会議は現地11日から農業のほか、非農産品、開発など5つのワーキンググループで交渉が始まっている。農業ワーキンググループの第1回会合は現地11日午後9時(日本時間12日午前11時)から始まった。
 農業分野はシンガポールのヨー産業貿易大臣がまとめ役となっている。ヨー大臣は9日に亀井農相と川口外相と会談、「意見が分かれて難しい状況だができるかぎり妥協策をみつける努力をする」と意欲を示した。
 しかし、農業交渉の枠組みに対しては(1)カスティーヨ議長案、(2)日本など修正案を提出した緩やかな改革を求める9か国グループ、(3)米・EU、(4)インド、ブラジルなど途上国グループ、(5)豪州、ニュージーランドなどケアンズ・グループと意見が対立している。
 とくにウルグアイ・ラウンド交渉との大きな違いは加盟国の3分に1を占める途上国の力。「議長案は米・EU提案に途上国の別扱い条項をいれたもの。それを見ても力の強さが分かる」(渡辺農水事務次官)。さらに途上国は先進国の国内支持の一層の削減とともに、米・EUに対しては輸出補助金の全面的撤廃を強硬に求めている。
 農業交渉は、まず「議長案を議論のベースにするかどうか、入り口のところでひともめある」(渡辺次官)と予想され、議論の先行きは不透明だ。 (2003.9.12)


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