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牛乳の「特売日」 店にとってトクにならず
−酪農乳業情報センターの調査 (5/7)

ライフコーポレーション深川猿江店
ライフコーポレーション深川猿江店
 量販店が行う牛乳の「特売」は長期的には必ずしもトクでないことが、酪農乳業情報センターがこのほどまとめた調査で明らかになった。
 この調査は同センターが学習院大学経済学部の上田隆穂教授の協力で行った「牛乳価格プロモーションの需要創出効果調査」。首都圏の2つの量販店の牛乳の価格設定パターンと売り上げ数など2年分のデータをもとに、いわゆる「特売」による需要創出効果と利益額などの関係を分析した。
 分析は両店舗とも売り上げシェアのトップを占めるブランドについて行った。このうちA店では、通常価格(もっとも高い価格)248円(1リットル品、以下、同)での販売日数は、2年間のうち約4分の1、198円での販売日が約4分の1を占めた。売り上げのほとんどは、198円以下の販売で占めており通常価格での売り上げはごくわずか。消費者は198円以下の特売日があることが分かっているため通常価格では買わないという、まさに価格破壊的な売り方になっていた。

■安定価格が利益確保に

 もっとも特売による需要創出効果がないわけではない。
 上田教授の分析では、2年間すべて通常価格で販売した試算結果と比較すると、実際の売り上げ数は2.4倍という結果になった。また、単純平均価格(毎日の価格の平均。216円)で販売した試算結果と比較しても、1.2倍になった。
 ただし、利益額を試算するとこんな結果が出た。
 A店の2年間のこのブランドの利益額は約280万円。通常価格で販売したなら、利益は約170万円と下がるが、単純平均価格で販売していれば約336万円、さらに加重平均価格(実際の売り上げ数量を反映させた平均価格。190円)で販売していれば約440万円と実際の利益額を大きく上回った。
 逆に実際の利益額と同じになる固定価格の試算値は、218円との結果だ。
 調査した別の1店舗でも同様の結果が出ている。こうしたことから同調査では「変動的に価格プロモーション(特売)を行うといった方法よりも、適正な価格による販売方法のほうが長期的な視点では利益をもたらす」と指摘している。
 実際には、競合店が特売日を設定すれば対抗するしかない、というのが現場の実感だろう。しかし、同センターでは「消費者の定価概念を崩さないことや、特売日のためのPRコストなども削減できる」と指摘するほか、「仕入れの変動が少なくなるなど供給側の負担も減る。全体として生乳の需給の安定につながる」と強調している。 (2003.5.7)



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