農業協同組合新聞 JACOM
   

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構造改革 最後のチャンスと指摘
−14年度農業白書 (5/20)

◆消費者の視点 一層重視

 政府は5月20日の閣議で14年度農業白書(食料・農業・農村の動向に関する年次報告)を決定した。
 14年度農業白書は、BSE(牛海綿状脳症)発生に対する行政への批判や、食品の不正表示、無登録農薬問題などが相次ぎ、国民から食の安全と安心について「かつてないほど厳しく問われている」と指摘。行政としてもこれまで以上に消費者の視点を重視するとしたほか、生産者、生産者団体、食品産業事業者などに信頼を回復するための「不断の努力」が求められているとしている。
 さらに消費者の支持があってこそわが国の農業生産、食料供給が成立していることを「原点に立ち返り再考する必要がある」など、消費者に軸足を置く農政の方向が強調されている。
 
◆生産資材価格引き下げ求める

 一方、農業生産の動向では、デフレによる持続的な価格低下に加え、特売セールなど消費者はより安いものを購入する傾向がみられることが、農産物販売価格を“下押し”するなど大きな影響が出ていることを指摘。農産物生産者価格指数は、平成3年を100とすると、13年には80近くまで落ち込んでいることを紹介した。
 また、生産者段階の農産物価格の低下の程度が、生産資材価格の低下よりも上回ったことから、両者の相対的な関係を表す農業の「交易条件指数」は、前年にくらべ1.6ポイント下がり、交易条件はさらに悪くなっていると指摘。昨年度の白書に引き続き、交易条件を改善する生産資材価格の引き下げは「高い市場占有率を有する農協系統の取り組みが不可欠」と記している。
 
◆望ましい農業構造 実現に危機感

 農業構造の動向では、大規模経営などへの農地の利用集積など構造改革に向けた動きが一定程度みられるものの、この5年間で自給的農家戸数がほとんど減少していない状況も紹介している。
 農業者の年齢別構成でもっとも厚みのある「昭和ヒトケタ生まれ」が、平成12年には66歳〜74歳になることから、農水省は7年〜12年の間に離農が急速に進むと予測していたが、この5年間の減少率はわずか1.1%だった。白書では、離農をせずに自給的農家にとどまった理由として、農地を集積する担い手がいないことから、「とどまらざるを得なかった」農家も多数存在すると分析している。
 また、販売農家の動向分析でも、大規模経営の農家戸数の増加率が低下しているほか、7年〜12年の間で全体としてより規模の大きい階層への移動割合よりも、より規模の小さい階層への移動割合のほうが上回る傾向が出ていると指摘。要因としては農産物価格の下落を挙げた。
 こうした傾向をふまえ、白書は22年に、効率的かつ安定的な農業経営が農業生産の相当部分を担うとした「望ましい農業構造」の実現は、「きわめて厳しい状況となっている」と危機感を示した。
 ただ、同時に昭和ヒトケタ世代の離農が今後進むことも予想されるとし、離農農家からの農地が担い手に集積されれば「農業の構造改革を加速させる」ことになるとして、現在を構造改革の「最後のチャンス」ともいえる情勢にあると強調した。
 そのうえで担い手育成策として、認定農業者制度の見直しの必要性、「集落型経営体」が育成すべき農業経営として位置づけられたことなどを挙げ、さらに大規模経営ほど契約生産や加工、消費者などへの直接販売といった多角化に取り組み高い収益を実現していることを強調している。 (2003.5.22)



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