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農林中金決算 2年ぶり増益―農林中金総代会 (6/26)  

 農林中央金庫の14年度決算は、有価証券運用による利益確保を図るとともに不良債権処理も進み、処理費用も13年度に比べ半減したことなどで経常利益を前年度比29.2%増の1074億円と2年ぶりの増益となった。26日の通常総代会は決算をはじめ、JAバンク基本方針の一部手直し、秋田・山形・長崎の3県信連との統合に伴う1部事業譲渡契約書などを承認したあと、役員選任等を行った。理事では4氏、経営管理委員と監事ではそれぞれ1氏が新任となった。

◆今後の収益を生む構造を整える

総代会後、記者会見する上野理事長
総代会後、記者会見する
上野理事長
 総代会後の会見で上野博史理事長は「実質ゼロ金利の長期化で資金運用利回りが総じて低下した中、投資配分(ポートフォリォ)の内容改善が利益確保に寄与した」と増益要因の一つを挙げた。
 また能見公一専務は決算概要の説明で「ここ数年、都市銀行とは違ったビジネスモデルを採用し、国際分散投資という手法を展開してきた。結果として都銀大手より貸出額が少なく、不良債権の金額も比率も低くなっている」と語った。
 貸出金は19兆1874億円で前年度比5兆456億円減らしたが、これは超低金利によって、国や預金保険機構などの公的機関向け短期貸出(入札方式)も、極めて低い水準まで低下したためだ。これを減らした分を有価証券運用に振り向けた。系統や企業への一般貸出金は横ばいだ。
 農林中央金庫の業務純益は2759億円と都銀レベルより低いものの、大手行は本業の業務純益で利益を出しながら不良債権処理と株価低落による損失計上で軒並み赤字決算となった中で同金庫の堅実決算が目立つ。税引後の当期利益は742億円となり、普通出資配当は年4%を行った。
 預金はJA・信連預金の増加などにより2兆1703億円増加し、年度末残高は40兆2391億円。また農林債券は現在の低金利の状況から1389億円減って年度末発行残高は5兆8071億円となった。
 自己資本比率は単体ベースで9.92%と前年度末比0.30%低下した。これは中期的に安定した収益を確保する観点から実施した運用資産の積み上げに伴いリスクアセットが増えたためで10%前後のレベルにあれば「問題はない」(能見専務)とのことだ。
 自己資本の増強策では、昨年11月に普通出資金(後配出資金を除く)を会員の拠出で2000億円へと倍額増資。また永久劣後ローン3670億円の借入枠を設定。うち半額を9月に調達した。必要時にあと半額を調達すれば自己資本比率を10%台後半の水準にできるとのことだ。さらに期限付劣後ローンの借り換えもした。
 総代会では、信用事業を続けるのが困難な専門農協等が同事業から円滑に撤退できるようにするなどのJAバンク基本方針の1部変更や信連との統合案件などの承認等を行った。
 なおリスク管理債権の合計は6555億円で1379億円減り、貸出金残高に占める割合は3.4%で大手行の約半分程度の水準となっている。

◆緒に就いた信連との統合

 農林中金はすでに宮城、岡山、栃木の3県信連と統合したが、年内には秋田、長崎、山形の3県信連と統合することになり、これに伴う1部事業譲渡契約書に調印した。総代会では、この契約書を承認した。これ関連して上野理事長は会見で次のように語った。
 JAバンクシステムの運営で大きな動きは信連との統合が緒に就いたことだ。他の県でも秋のJA全国大会に向け、信連のあり方などについて検討が進むと思われるので金庫としても必要な対応を進めたい。
 JAバンクシステムがスタートして1年半を経たが、全体の内容やいろいろな状況が的確に把握できるようになってきた。JA全中の監査機構の努力も大きいが、我々としてもJAバンク全体の指導責任を果たせたのではないかと思う。

◆夏期特別推進を展開中

 JAバンクでは、平成15年度に重点的に取組む事項として住宅ローン増強など大競争時代の主戦場ともいえるリテール(小口金融)分野での推進に全力を挙げることを打ち出し、いまJAバンク夏期特別推進運動を展開中だ。
 農林中金JAバンク企画実践部によると、情勢は企業のリストラ継続やデフレの深刻化などを背景に労働賃金が減少傾向にあり、生活費を補うために貯金の取り崩しまで進んでいる模様だ。しかし、夏のボーナス時期は資金調達の機会であり、利用者の購買意欲も上がってローン需要も生じる時期だとしている。
 このタイミングをとらえ6〜7月の運動を「JAバンク サマーキャンペーン2003」と名付けた。
 取り組みの柱は(1)個人貯金の獲得、(2)市場性金融商品の販売と、JAの投信つみたてサービス契約の獲得(以上は個人預かり資産の獲得)、(3)マイカーローンとカードローンの取り組み強化となっている。
 一方、住宅ローンについては通年運動の最重点と位置づけ、長期固定金利型の「JAあんしん計画」を開発。5月の島根県を皮切りに、山形・岐阜・山口・宮崎等の準備の整った県から順次、取扱を開始した。
 これは住宅金融公庫資金より有利で他業態のローンと比べても競争力の強い商品だ。農林中金の取引先である住宅メーカー4社とも提携ローン契約を結んだ。 (2003.7.2)


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