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日本の流通コストは高くないなど問題点指摘も
卸売市場の自由化めぐってセミナー (7/29)   

 卸売会社の収益は8割が出荷者の払う定率制(野菜8.5%、果実7%)の手数料だが、農水省の食品流通効率化研究会は、そうした競争規制が流通の高コスト構造をもたらしているとして手数料の自由化や規制緩和を提言した。研究会の座長だった高橋正郎女子栄養大学大学院客員教授らを講師に「卸売市場改革の方向」を考えるセミナーが7月29日都内で開かれた。主催は非営利法人の「野菜と文化のフォーラム」。
 高橋教授は「研究会は、規制を原則としてきた卸売市場法を抜本的に改正して自由を原則とし、官主導から民主導に変える方向を議論した。自由なビジネスは卸・仲卸業者の優勝劣敗を招くが、それを超えてこそ展望が開ける」と説いた。
 これに対し、もう一人の講師である東京青果(株)事業企画推進室の柿下秋男副部長は「中間流通コストは必ずしも高くない」と農水省の問題意識に反論。アナリストの分析結果を示した。
 これによると、トマトの小売価格に占める中間経費(平成11年度)は米国の30%に対し日本は19.5%に過ぎない。米国は優勝劣敗が進んで巨大な小売業の寡(か)占化状態となったため高コストとなっている。
 「だから中間業者を減らしたからといってコストが下がるわけではない」と柿下副部長は強調した。
 また小売経費は量販店が35%と高く、町の八百屋は20%強と低いが、これは家族労働で吸収しているからだとの実態を指摘した。
 一方、産地は手数料を原資にした出荷奨励金の維持を望み、また仲卸は代金を期日内に卸に支払う完納奨励金廃止に難色を示すといった事情も挙げた。
 さらに改革対応策としては低温卸売場の整備によるコールドチェーンの確立などがあるとした。
 高橋教授は、家庭の主婦が生鮮野菜や果物を買う率が低下し、中食・外食産業の業務用需要が増えているが、卸売市場は、この変化への対応が不足と指摘。
 さらに食料問題を解くカギは農業問題ではなく、むしろ食品産業にあるのではないかとし、国民の食料最終消費支出を100とすると、その8割は食品産業が供給しており、国内農業者の供給割合は2割に過ぎないとの産業連関を示した。
 セミナー参加者からは▽食品流通効率化研究会の報告は卸売市場の実態を知らない人がまとめたようだ▽報告には農業を育てる考え方が入っているのか―などの批判的な質問があり、高橋教授は「法人の農業経営が増えており、担い手は育っているが、問題は土地利用調整だ」と答えた。 (2003.8.1)



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