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日本 単独でペーパー提出−WTO農業交渉 米・EUをけん制 (8/20)
  9月のメキシコ・カンクンでの閣僚会議に向け大詰めを迎えているWTO(世界貿易機関)農業交渉で日本は8月20日、非公式首席代表者会議に単独でペーパーを示した。
 わが国にとってもっとも重要な分野である市場アクセスについて、同ペーパーは「品目を3つのグループに分類しUR(ウルグアイ・ラウンド)方式と同等の効果を有する方式」での関税削減を主張。3グループの分類や削減数値については、重要品目に配慮することとしている。
 また、関税割当拡大の義務づけと関税の上限設定は行うべきではないと強調した。
 一方、国内支持では、「黄」、「青」、「緑」の政策の枠組みは維持すべきとし、「黄」の政策の削減は総合AMS(助成合計量)方式で行うと提案。「緑」の政策の要件は現行農業協定どおり維持されるべきとした。
 輸出規律では、すべての形態の輸出補助金に同等の規律が適用されるべきとした。
 同ペーパーについて、農水省は「日本提案の範囲内」だとし、とくに市場アクセスで米など重要品目を守ることに主眼を置いた。これは8月13日に提出された米・EU共同ペーパーで、重要品目についてUR方式での関税削減を示したことに一定の評価をしたもの。ただし、関税割当拡大と上限関税には反対するとクギを刺している。
 さらに国内支持と輸出規律の提案には、いずれも「市場アクセスの議論の状況に応じてさらなる柔軟性を示すことができる」ことを表明。関税削減方式でわが国の主張を実現するため、この2分野ではさらなる削減や規律強化などにも応じる姿勢を示して、米国とUEをけん制する内容となっている。

◆UR支持グループもケアンズ・グループも分裂
  独自提案が続出 合意は難航か

 日本が今回単独での提案に踏みきったのは、米・EU共同ペーパーに対する評価で、これまで市場アクセス分野ではUR方式支持でまとまっていたグループのなかにも、立場の違いが明らかになったからだ。
 スイス、ノルウェー、台湾、韓国など6か国は、市場アクセスではわが国と同様、関税割当拡大と上限関税には反対だが、国内支持の削減には応じられないとする共同ペーパーを提出している。
 また、インド、ブラジルなど途上国を中心とした16か国は、先進国に上限関税と関税割当拡大を求め途上国には特別品目を設定すべきと提案。国内支持では青の政策の廃止、緑の政策の上限額設定を主張すべきとの共同ペーパーを示している。
 この16か国のなかには、インドなどUR方式支持グループもある一方、ブラジル、タイ、アルゼンチンといったケアンズ・グループも含まれている。
 ここにきて各国とも死守したい分野を優先したことから、これまで対立してきた陣営が分裂、「先進国対途上国」の図式になってきたともいえる。
 日本は、独自ペーパーを示しながらもEUとの連携には変わりがないとする。また、途上国の支持を得るため、同ペーパーには、途上国のために特別かつ異なる措置(S&D)について「建設的に議論する考え」があることを盛り込んだ。
 WTO農業交渉は、9月のメキシコ・カンクンでの閣僚会議で、関税削減率など数字は決めず、枠組みのみの合意をめざす可能性が高まっており、そこに向けて8月22日にもジュネーブでWTO一般理事会のカスティーヨ議長が合意案を示す見込みとなっている。合意案が示された場合、25、26日の一般理事会で議論され採択される可能性もある。ただし、採択は全会一致でなければならない。
 また、米・EUが共同ペーパーを示したことに対し、独自提案も続出、なかには「(3月に提示された)ハービンソン議長案のほうがまだまし」とする国もあるなど、カスティーヨ議長が合意案を予定どおり示せるかどうかも不透明との見方もある。 (2003.8.22)


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