◆S/M比率800台に
JA共済連(新井昌一会長)は、11月27日に15年度上期(4月〜9月)のJA共済の業績を発表した。
それによると、新契約高は、長期共済が16兆3969億円(前年同期比100.2%)となっている。共済種別に見ると、生命総合共済が8兆0419億円(同96.7%)と鈍化傾向にあるものの、建更共済が8兆3538億円(同103.8%)と好調に推移し、長期共済全体として前年並みを確保した。年金共済は、予定利率の見直しによる共済掛金引き上げの影響からか年金年額ベースで962億円(同81.4%)と落ち込んだ。短期共済は、自動車共済が同101%、自賠責共済が同100.5%と堅調に推移、短期共済全体では受入掛金ベースで2358億円(同101.0%)となった。
長期共済の保有契約高は378兆3689億円(同98.3%)と14年度期末より4兆5314億円の純減となった。この主原因は、満期共済契約の増加にあるとJA共済連では分析しており、満期対策が今後も大きな課題となっている。年金共済の保有契約高は1兆6262億円(同106.9%)と636億円の純増となっている。
総資産は、14年度期末よりも6926億円増の41兆6370億円(同103.3%)、運用資産は40兆4005億円(同103.3%)と順調に推移している。
主要な経営指標としては、基礎利益が、保有契約の減少と自然災害による共済金の増加などによって前年同期よりも524億円減少し1870億円に。実質純資産額も金利の上昇による債権の評価益減少などにより同4178億円減少し6兆0408億円となったが、経営の健全性を示す支払余力率(ソルベンシー・マージン比率・S/M比率)は前年同期より90ポイント、14年度期末より50ポイント増加し、803ポイントと高い水準を示しており、依然として健全な経営状況は維持されているといえる。
◆「生保離れ」に歯止めかからず
同じ日に生保大手10社の上期業績も発表された。表はJA共済を含めた主な指標をまとめたものだが、生保10社中8社で保有契約高が純減し、10社合計では14年度期末から2.9%の減少となっている。これで6年半連続の保有減となった。
保有が減少しているのは、JA共済の場合には満期が多いためだが、生保の場合は、予定利率引下げ論議で消費者が生保に対して不安を感じ解約が6〜7月に急増したこと(10社合計で前年同期比4.2%増)や、朝日生命の55%を筆頭に6社で新規契約が2桁減になるなど(同15.8%減)、依然「生保離れ」に歯止めがかからず、営業面で苦戦しているためだといえる。
S/M比率は各社とも増加している。JA共済の場合は、建更共済などの海外再保険による回収範囲の拡大によって巨大災害リスクが減少したことで、リスク合計額が減少しS/M比率が増加したが、生保の場合には9月の株高のためだといえる。
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保有契約高 |
新規契約高 |
基礎利益 |
支払余力比率 |
JA共済 |
3,783,689 |
163,969 |
1,870 |
803,0 |
(▲1.2) |
(0.2) |
(▲21.9) |
(753.0) |
日本生命 |
2,859,886 |
103,421 |
2,557 |
800.6 |
(▲2.9) |
(▲17.1) |
(▲3.5) |
(630.6) |
第一生命 |
2,074,497 |
79,040 |
1,829 |
694.3 |
(▲2.4) |
(▲10.6) |
(3.7) |
(543.5) |
住友生命 |
1,821,691 |
66,680 |
1,385 |
601.5 |
(▲3.3) |
(▲21.8) |
(3.5) |
(497.9) |
明治生命 |
1,109,823 |
41,190 |
1,108 |
660.5 |
(▲3.0) |
(▲12.3) |
(▲8.5) |
(532.0) |
安田生命 |
654,109 |
36,929 |
958 |
629.6 |
(▲3.0) |
(8.9) |
(6.5) |
(617.6) |
朝日生命 |
651,841 |
18,613 |
307 |
615.0 |
(▲6.3) |
(▲55.0) |
(4.9) |
(360.4) |
三井生命 |
563,513
|
21,244 |
470 |
502.5 |
(▲3.7) |
(▲27.0) |
(▲10.4) |
(410.4) |
大同生命 |
390,758 |
21,094 |
480 |
1,069.7 |
(▲0.7) |
(▲8.1) |
(23.9) |
(860.2) |
太陽生命 |
156,983
|
14,670 |
251 |
833.1 |
(2.8) |
(39.6) |
(53.1) |
(681.5) |
富国生命 |
375709 |
19025 |
301709.6 |
709.6 |
(0.2) |
(6.7) |
(12.3) |
(650.5) |
注1)支払余力比率以外の上段の単位は「億円」
注2)保有契約高の下段は、15年3月末比伸び率・%
注3)新規契約高、基礎利益の下段は、前年同月比伸び率・%
注4)支払余力比率下段は、15年3月末実績
注5)JA共済の保有契約高および新規契約高は、長期共済のみ |
◆いまこそ事業基盤を確保するチャンス
14年度期末では10社中7社が株式含み損を抱えていたが、9月の株価が1万円を超えたため、5社が反転し10社中8社が含み益を確保したことで、自己資本が厚みを増しS/M比率が改善され、ほっと一息ついたといえる。しかし、株価がこのまま安定する保証はなく、今後も生保各社は株価の動向に一喜一憂することになるだろう。また、「逆ザヤ」もほぼ横ばいの状況にあり、生保各社にとっては営業面での苦戦もあり当分苦しい状況が続くのではないだろうか。
そうしたなかでJA共済は、新規契約が前年並みに推移しているように、消費者の信頼は高いといえる。下期以降に向けて満期対策にしっかり取り組み保有減少に歯止めをかけることと、やや出遅れている生命総合共済を推進することで、事業基盤をしっかり確保するチャンスではないだろうか。 (2003.12.9)
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