農業協同組合新聞 JACOM
   

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自由化には消費者も強い反発
−(社)農業開発研修センターの調査 (2/18)

 WTO(世界貿易機関)農業交渉やFTA(自由貿易協定)交渉での農業分野の自由化については、生産者だけでなく消費者も強い不満や反発を持っていることが(社)農業開発研修センターの「自治体・JA・地域生協トップ層意識調査」の結果で明らかになった。

■生協トップ層、貿易ルールの根本的修正求める声強く

 農産物貿易交渉について「どの方向で国内世論の合意形成を図るべきか」との質問で「農業サイドがもっと自由化に歩み寄る方向」と答えたのはわずか5.5%。
 もっとも多かったのは「多様な農業の共存を主張して粘り強く交渉。交渉結果によっては影響を可能な限り阻止する国内措置をとることで合意形成」で57.2%だった。ついで「自由貿易主義一辺倒のWTO体制の中身を変えさせることを基本に合意形成」が33.6%だった。
 ただし、地域生協トップ層の答えでもっとも多かったのは「自由貿易一辺倒の中身を変えさせること」で57.6%と過半数を占めた。JAトップ層では41.8%。地域生協トップ層のほうがより根本的な修正を求めるべきだとしていることが分かった。
 FTA交渉のスタンスと決着後の支援策の打ち方については、「自由化への歩み寄りは仕方ないとしても、その損害については政府の責任で直接支払いなど経営所得支援策を打つべき」との選択肢に賛同した市町村は27.9%、JAは22.6%と低く、生協は3.0%でしかなかったことが注目される。
 高かったのは「農業については自由化例外が原則で交渉に臨むべき。その結果、やむなく自由化した場合に支援策を打つべき」で市町村63.9%、JA73.2%、生協75.8%だった。同センターは「支援策を打つから自由化もやむなしというかたちで取引するようなことがあってはならないことを示している点で注目される」と分析している。

図1.農産物貿易交渉をめぐって国内世論の合意形成を図る方向

■自給率目標は日本農業維持の決意

 同アンケートでは「自給率目標の堅持と数値目標の設定」についても質問した。
 もっとも多かったのは「実現可能性には問題があっても日本農業を残していくという強い決意の象徴的な指標。今の目標値は降ろすべきではない」が44.1%。ついで「食料安保や農業の多面的機能を発揮するにはもっと高めに設定すべき」が42.7%だった。両者を合わせて9割近くを占めた。
 自給率目標を達成するための対策として重要なものは「消費者に生産者側のコスト削減努力などの理解を求め、国産重視の購買態度を確立すること」が74.3%ともっとも高かった。
 二番目は「消費者が少々高くても品質・安全面を評価し、国産の生産に一層努力すること」が73%だった。
 ついで高かったのは「生産性を上げてコスト削減し競争できるようにすること」が58%だった。JAでも54.5%、生協では83.3%となっている。
 また、「農家が引き合うように価格補てん政策を強化すること」は全体で32.2%。JAは36.9%、生協は20%にとどまった。この選択肢の支持率が意外と低いことについて同センターでは「補助施策の強化より、筋の通った農産物貿易政策こそ先決、ということではないか」と分析している。
図2.自給率目標を達成するための対策として重要なものは何か

(2004.2.18)



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