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「受託組合」も担い手に−農水省が企画部会に示す (3/22)

■担い手を明確化

 農水省は「基本計画」の見直しを検討している食料・農業・農村政策審議会企画部会に3月22日、担い手と農地制度についての考え方を示した。
 農水省は農業の構造改革を進めるには、「担い手」を明確化し、支援施策をその担い手に集中化、重点化させることを加速化させる方針だ。
 現在、同省のいう担い手は、「認定農業者」と「特定農業団体」と整理していることを今回示した。
 「特定農業団体」とは、集落営農組織のうち、農業生産法人になる計画を策定しており、それが確実に実現されると見込まれる組織。5年以内に法人化することや目標農業所得などが計画に盛り込まれていなければならないという要件がある。

■あくまで法人化が前提

 集落営農組織を担い手として位置づけ、施策集中化の対象とするという方針のなかで、同省は個別経営では担い手の確保が困難な地域では「積極的に集落営農の組織化を進めるべき」と強調している。同時に集落営農の組織化を進める上で、集落内の個別経営から農地の返還を求めるケースがあることも指摘、土地利用について集落内で「十分な話合いよる問題解決を推進」すべきとしている。

■納税猶予制度の拡充を

 ただ、集落営農組織を推進する方針とはいっても将来の法人化が支援対象としての前提条件。特定農業団体となるのがその具体策だが、その要件に法人化までの年限を決めていることなどについて現場からの批判もあり、今後の検討課題となる。
 さらに相続税・贈与税の納税猶予制度も課題だ。現在は、引き継いだ農地で営農を続けていれば相続税の納税猶予が認められている(生前一括贈与の場合は贈与税)。しかし、貸借権の設定が行われると猶予は打ち切られる。これが農地の流動化を阻害している点はこれまでも指摘されてきた。
 今回は、全国で集落から水田農業ビジョンづくりに取り組もうとしているが、集落営農組織に農地利用を集積しようとしても「農地の出し手からは、自分の相続税はどうなるのか、と問われる。合意形成を進めろといってもこの問題の解決が不可欠」とのJA担当者の声も聞かれる。農地の利用集積を進めて水田農業の構造改革を進めるとの視点から改善が必要で、農水省も「経営の継承にかかわる支援策の拡充を検討すべき」との方針を示している。

■作業受託者も主体として

 一方、多様な担い手の確保の観点から、農水省は今回、農作業受託組織や酪農でヘルパー組織について「積極的に農業の主体として位置づけを検討すべき」と担い手とする方向を示した。
 これまでは農地の権利を持たない受託組織は、農業経営の補完的な役割を担うものと位置づけてきたが、地域の実情に即して多様な担い手が活動できる観点から施策を見直すべきとの方針を打ち出した。

集落営農を基本に検討を−JAグループの方針

 22日の企画部会では、農水省が示した担い手などの検討方向について議論した。そのなかでJA全中の山田俊男専務は、担い手育成と水田農業の農地利用のあり方は表裏一体だとし、「農地の所有を認めながら利用を担い手にどう集積していくか」が課題と指摘。しかし、現実には深刻な担い手不足に悩んでいる地域が多いことから、「集落営農やそれをもとに発展した経営体を基礎に考えるべき」と強調した。
 実際に集落営農から担い手が育ってきた例も多いとして「農地の社会的利用について新しい仕組みが必要」などと提唱した。 (2004.3.29)



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