亀井農相は1月15日午前、米国のヴェネマン農務長官と電話会談し、BSE問題と牛肉などの貿易再開について話し合った。
会談で亀井農相は禁輸の長期化を望むものではないと、早期の貿易再開について協議をすることにヴェネマン長官と合意した。また、同時に双方で食の安全・安心の確保が重要との認識でも一致した。
これを受けてヴェネマン農務長官は19日からの週に代表団を日本に派遣することを表明。亀井農相も受け入れを歓迎した。
ただ、亀井農相は輸入再開の条件としては、これまでどおり日本が実施している全頭検査の実施や特定危険部位(SRM)の除去と同等の安全確保策の確立が必要との説明をし、会談後の記者会見でもこの日の会談が「貿易再開への最初の話し合い」としながらも、「米国の対応を見ない限りわからない」と述べるなど、日本が求める安全性確保策を米国が打ち出すかどうかに協議の行方はかかっているという認識だ。この日も、米国が昨年末に示した30か月齢以上の牛の特定危険部位の除去などの追加的な措置については「わが国が求める基準に達していない」と指摘し、安全・安心の確保が重要との認識では一致したとはいえ、具体策となると大きな隔たりがある。
日本側は全頭検査などの対策実施という「根幹が揺るがなければ話し合いに応じることに問題はない」(石原事務次官)と説明するが、派遣代表団の具体的な性格や構成員を米国が明らかにしていないまま、日本は受け入れを表明した。
昨年末に日米会談では貿易再開について議論するのは事実関係が不明な部分が多いことから「時期早尚」と米国に主張、その場で派遣を表明し、年初から渡米した調査団はまだ帰国報告もしていない段階だ。
早期の貿易再開で認識が一致したことについて石原事務次官は「(牛肉の需給について)外食産業で若干の問題があるから」との国内的な理由も示唆した。
日本は、米国にもカナダに対しても「全頭検査、特定危険部位のすべての除去によって消費者の信頼を回復してきた」と説明している。それはBSEという食の安全・安心を揺るがす事態に発生当事国としてどう対応するのか、貿易関係のあるなし関わらず、その危機感をまず認識すべきとのメッセージではないのか。
「認識の譲歩」が「政策判断の譲歩」につながるようなことがあってはならない。
(2004.1.16)