(社)全国食肉学校(多田重喜学校長)は1月14日、群馬県高崎市内のホテルで「総合養成科第39期生校外実習体験発表会」を開催、今期の在学生28名全員が現場での研修成果を発表した。
発表テーマは、現場で学んだ商品づくりの技術的な内容だけでなく、売り場づくり、仕入れの考え方、接客販売のポイント、収益率の向上策、衛生管理など、販売から経営面まで多岐にわたり、発表者はそれぞれ「この体験を忘れず、卒業後の仕事に活かしていきたい」と決意を新たにしていた。
今年で開校30年となる同校の教育理念は「産学協同による実践教育と心豊かな人間形成」。この理念の具体化のひとつが校外実習である。
1年間のコースで食肉のプロを養成する総合養成科は、4月から9月までの前期で基礎教育を行い、10月からその応用編としての実践的な現場教育に入るが、12月までの3か月間のこの校外実習は、後期課程の目玉のカリキュラムだ。「食肉のプロとして通用する力を身につけてもらうのが狙い。いわば道場での修行のような役割を果たす機会」と多田校長は話す。
学生たちが実習体験をする現場は同校と契約した教育指定店で、現在12企業と実習生受け入れの契約を結んでいる。しかも単に現場実習を体験するだけでなく、企業側の役割、指導体制についても同校と密接な連携で研修を行う体制を整備しており、企業側は実習生担当の指導員も置いている。
実習が始まると1週間ごとに、到達目標とその理解度についてのレポートが指導員のコメントつきで同校に送られてくる。また、同校の講師も実習現場に足を運んで指導する。約1か月後には、一旦、現場を離れて集合研修を行うことになっており、ここで課題を整理し直すというきめ細かい指導体制をとっている。
実習先として契約している企業が多彩なのも特徴だ。
東京都内の老舗食肉専門店や、量販店、さらには卸、小売り、ステーキハウスなど多角経営を行う企業や直営農場を持つ食肉専門店などのほか、ハム・ソーセージメーカーでも家庭食用メーカーと外食産業向け専門メーカーもあるなど、まさに現在の国内食肉業界の多様な業態の最前線を網羅している。学生たちは、こうした多彩な現場から、卒業後の進路に合わせて実習先を選択することができる。
■現場の新鮮な体験を報告
発表会で学生たちは、それぞれの現場での新鮮な体験を報告した。
量販店での商品と売り場づくりを選択した学生は、「売り場は商品を伝える場所。商品は店の顔。お客様のニーズに応えるためには豊富な知識と技術が必要」とこのテーマを選んだ理由を説明した。
体験した精肉商品・加工品製造の技術を紹介をし、「現場では時間を意識し迅速に作業することが求められた」と話し、売り場づくりのポイントとして「売りたい商品を目立たせる工夫」、「季節や行事に合わせた装飾やコーナーの設置」などをあげ、「毎日のように売り場は変動していることを実感した」と感想を述べていた。
試食販売を体験した学生は「声かけの大切さと商品アピール」と題して報告。まず「恥ずかしがらずに大きな声を出すことが大事」と話し、「この肉はすき焼きに最適、カレーにいかが、と具体的な料理の提案とともに商品の特徴をアピールすることが重要」と報告した。
また、お客さんを見て話しかける内容を考えることも大切で「お年寄りには、やわらかい、おいしいという言葉で説明し、主婦にはお値打ち、お買い得といった話で料理の提案をすることがポイント」などと実践的な接客法を紹介した。
いかに無駄をはぶき収益確保しているかに驚いたという報告も多かった。
ある量販店での実習生はかつて1週間に100kgを超えていたロスを挽肉に変えた現場体験を報告。利益率を向上させるこのような工夫には、食肉整形の技術を磨くことも重要だと報告した。
また「ロスを商品に」と題した発表では、実習先の量販店では普通なら挽肉として販売されると思っていた売れ残りの切り落とし肉を味付けして焼き肉用として販売したり、牛バラの大きめのクズ肉を「バラシチュー用」、牛モモの大きめのクズ肉を「モモシチュー用」として販売している現場に「こんな商品化もできるのか」と驚いたと報告。挽肉にしてしまえば100g250円のものが、400円から500円で販売できることやさらにロスを「ペットフード」として売っていることなど、徹底した商品化の努力を紹介した。
老舗専門店の仕入れ現場を知ることで価値観が変わった報告した学生もいた。
銘柄を特定せずその時期の質で仕入れを判断し、さらに買い付け時、大分割後、熟成後とそれぞれでチェックする独自のランク付けを行いながら品位維持を図っていることを知り「ブランド牛で勝負するのではなくカンパニーブランドを確立するという哲学に自分のものの見方を広げることができた」と話した。
■プレゼン能力育成にも力
多田校長によると、同校はこの発表会自体も重要なカリキュラムと位置づけているという。
1年の教育期間のうち、学習や体験の発表機会はグループ発表も含めて8回ほど設定されている。今回はこうした発表の「総仕上げ」の場でもあった。
発表資料、原稿の作成なども専任講師が指導するが、こうしたプレゼンテーション能力を育成することが、卒業後、現場で重要になるとの考えだ。スタッフとしての自社への営業企画提案、あるいは取引先との交渉など、実社会ではプレゼンテーション能力が問われる。また、経営者の立場になれば一層、自分が描く経営実現のために顧客や消費者とのコミュニケーション能力が重要になる。同校はそうした資質も備えた食肉のプロの育成をめざしているといえる。
学生たちは今後、食肉販売技術管理士の資格取得試験などを経て、2月27日に卒業式を迎える。卒業前には自分たちで製造したハム、ソーセージ、惣菜など地域の人々に販売する感謝祭も行われる。4月以降、食肉のプロとして現場での活躍が期待される。
◎短期講習会も充実
「牛・豚枝肉カッティングコース実践コース」を3月に開催
(社)全国食肉学校は通信教育や短期講習会にも力をいれている。
3月には「牛枝肉カッティング実践コース」と「豚枝肉カッティング実践コース」が開催される。
本コースの特徴は▽枝肉の原料知識から部分肉製造・用途知識・原価計算・衛生管理・表示についての基本学習▽カッティングは4、5人で半丸枝肉を脱骨、整形、小割り、用途別規格づくりまで実習できる▽製造・販売の基本となる各部位の用途知識、数値管理、原価計算の基本が学習できることなど。
会場は(社)全国食肉学校。日程は「豚枝肉カッティング実践コース」が3月1日(月)〜5日(金)(4泊5日)、「牛枝肉カッティング実践コース」が3月8日(月)〜12日(金)(4泊5日)。各コース定員20名で定員になり次第しめきり。
問い合わせは(社)全国食肉学校=TEL0270(65)2571。 |
(2004.1.16)