米国で発生したBSEにともない1月8日から米国、カナダに派遣されていた調査団が19日、調査結果報告を公表した。
今回のBSE感染牛は、耳標、発生農場(ワシントン州マブトン)の記録やDNA鑑定などから、1997年のカナダ・アルバータ州産まれと確認された。また、出生農場では当時、肉骨粉を含む配合飼料が使用されていたことが判明したことから、ほぼカナダで感染したと指摘した。
この感染牛は他の80頭とともに米国に2001年9月に輸入され、このなかに出生農場で感染牛の出生1年前から1年後の2年間に生まれた同居牛が含まれていることから、米国では同居牛の特定と殺処分、BSE検査を実施しているという。
しかし、調査の結果、感染牛に給与された肉骨粉が米国にも輸出されていた可能性があることが分かった。 また、米国とカナダでは肉骨粉を含む飼料や飼料原料、さらに生体牛や畜産物などが相互に流通しており「牛肉関連産業が強く統合されている」ことも指摘。さらに、米国では1997年8月以降、肉骨粉などの牛への給与は禁止しているが、小規模農家ではこの措置が遵守されているかどうか調査結果が不明なことや、鶏や豚への給与は禁止されていないため、飼料工場での製造段階での「交差汚染」の可能性が否定できないとした。
こうしたことから、今回の感染牛がカナダで感染したことはほぼ間違いないとしても、「米国とカナダでBSEに関する汚染状況に大きな相違があるとみなすことは困難」で、「今後、米国でBSEが発生しないという保証はない」と結論づけている。
米国では1990年から24か月以上のBSE高リスク牛(歩行困難、中枢神経症状など)に対してサーベイランスを実施しているが、2003年にはわずか2万頭程度の検査数でしかない。今回の発生を受けて4万頭程度に増やすことを検討しているが、これは米国での全と畜頭数の約0.1%にすぎない。
また、肉骨粉など飼料の給与措置の拡大や交差汚染防止対策も検討しているというが、調査団に対して米国食品医薬庁(FDA)は「いつ実現できるか見通しはない」と回答したという。
米国は、BSE感染牛がカナダで感染したことが明確になった場合、BSE発生国ではない、とすることが可能との判断を示していたが、調査団は「米国とカナダは分けられない。発生国か、未発生国かという議論は超えている」と指摘、米国にもBSE汚染が広がっている状況にあるとして、再発生の可能性は否定できないことを報告した。
今週、米国は代表団を日本に派遣して貿易再開に向けての協議が開始される見通しだが、石原次官は同日の会見で「報告をふまえて代表団と話し合いをしていく」と強調した。
(2004.1.20)