食料・農業・農村政策審議会企画部会の第4回会合が2月12日に開かれ、主要課題のひとつ「品目横断的政策」について議論した。
農水省は、個別品目ごとの価格支持政策から、経営に着目して品目横断的に支援する施策に転換し、その対象を担い手に絞ることによって「水田農業などの遅れている農業構造改革を促進し、需要に応じた生産を推進できる」と説明。
また、WTO農業交渉では、品目別に国内支持額の限度を設定する案も示されていることから、「今後の国際規律にも対応できる政策体系に転換する必要性」を理由としてあげた。
■地域に配慮した施策を
議論では、まずこうした政策転換の理由や背景を明確に説明すべきとの意見が出た。
JA全中の山田俊男専務は、現在は品目ごとに経営安定対策があり、需給調整や品質向上に取り組んでいること、さらに担い手への経営安定対策も確立されつつあることを指摘し、「なぜ転換するのか、何が変わるのか」と現行施策の必要性を主張し、今回の農政転換の狙いを改めて説明するよう求めた。
また、施策の対象についてわが国の水田農業は集落営農が中心になっていることを強調。施策の対象に「高いハードルを設定する」という農水省の方針に「地域によってハードルが異なる」と地域特性をふまえるべきなどと主張した。
こうした点を指摘したうえで、「アメリカのような新大陸型ではないわが国特有の農業の将来像があるはず。その共通認識を持つための議論をすべき」と提唱した。
■集落営農、検討対象
また、「何のための政策転換か。目的に合致した手段かどうか厳しく検討すべきだ。担い手を育成するというがこれまでなぜ育成できなかったか検証が必要」(安高澄夫JAおんが組合長)、「この方向では農業は生き残れるかもしれないがムラは生き残れるのか。農村環境の維持発展も重要」(森本一仁元JA全青協委員長)などの意見もあった。
農水省の白須敏明生産局長は政策転換の理由について「現在の価格支持政策は手取り保障の形になっている。それを品目横断的な政策にし経営を支援したほうが、国民的な理解が得られ、効率性も高まる」と答えた。
集落営農が施策対象になるかどうかは「米政策改革で、一定の要件のもとで集落型経営体を位置づけた。当然、対象の候補にはなるが要件はこれからの議論」(皆川芳嗣企画評価課長)。
須賀田菊仁総合食料局長は「(対象として検討するが)将来は経営体として所得を追求することが必要」と述べた。
■「補助金ではなく将来の食への投資」
そのほか、「国民の食料確保をいかに図っていくかが政策の基本。補助金ではなく将来の食料確保のための投資と考えるべき」との指摘もあった。ただ、消費者委員からは「消費者には食料確保への危機感は実際にはない。消費者の役割もふくめた議論を巻き起こす仕掛けが必要」との指摘もあった。
一方、具体的な議論を急ぐべきとの意見もあった。
坂本多旦船方農場グループ代表は「品目から経営体に施策を集中させることは避けて通れない。プロ農業者の定義を勇気をもって決め、地域の農業者に分かりやすく説明すべきだ」と述べた。また、品目横断的対策の対象となる北海道の畑作地帯では「地域の存立にかかわるとの意識がすでにある」(西山泰正北海道農政部次長)として「支払い対象、支払い水準、支払い事務負担など、スピード感をもって具体的な議論を早急にすべき」との意見もあった。
次回は3月5日に「農業環境・資源の保全政策」を議論する。 (2004.2.13)