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日本・メキシコFTA 大筋で合意−農産品360品目で関税撤廃
−国内農業への影響 注視が必要 (3/12)

カナレス経済相、ウサビアガ農牧相とのテレビ会談
3月12日夜、亀井農相、川口外相、中川経産相がメキシコのカナレス経済相、ウサビアガ農牧相とテレビ会談、1年4か月にわたった実質的な交渉は終了した。
 日本とメキシコとの経済連携協定締結交渉は3月12日、大筋で合意に達した。同日夜、亀井農相、川口外相、中川経産相がメキシコのカナレス経済相、ウサビアガ農牧相とテレビ会談し、1年4か月にわたった実質的な交渉は終了し、今後は協定文書の確定に向けた事務レベル作業に入ることを確認した。
 外務省によると協定文書の確定までに約3か月ほどかかるとみており、その後、両国首脳による調印、両国国会の批准を経て発効となる。両国政府は来年早々の発効をめざす。
 メキシコとの自由貿易協定(FTA)の締結は、農業分野も含めた包括的な経済連携協定としてはわが国で初。農産品では360品目で関税撤廃する。
 米、小麦、みかん、リンゴ、主要乳製品など重要品目は例外扱いとなったが、豚肉など5品目では低関税枠を設けるなど一部自由化を受け入れ国内農業への影響も懸念される。JA全中の宮田勇会長は「今後の実際の影響を注視したうえで、国内需給や価格に影響を生じないよう対策が必要である」との談話を発表した。

■農業 ぎりぎりの内容

 農業分野で焦点となったのが豚肉、オレンジジュース、牛肉、鶏肉、オレンジ生果の5品目。(表参照)

◎日本・メキシコFTA(自由貿易協定) 農産物の合意内容
品目 合意内容
豚 肉 ・1kg393円より高い品についての関税半減輸入枠を設置(関税率4.3%→2.2%)。
・輸入枠は初年度3.8万トン→5年め8万トン。
オレンジジュース ・関税半減輸入枠を設置。
・輸入枠は初年度4000トン→5年め6500トン。
牛 肉 ・当初2年間、無税枠を設定。10トン。
・3年め以降は、低関税輸入枠を設定し3000トン→5年め6000トン。
・低関税輸入枠の税率は協定発効後2年めに再協議。
鶏 肉 ・当初1年間、無税枠を設定。10トン。
・2年め以降は、低関税輸入枠を設定し2500トン→5年め8500トン。
・低関税輸入枠の税率は協定発効後1年めに再協議。
オレンジ生果 ・当初2年間、無税枠を設定。10トン。
・3年め以降は、低関税輸入枠を設定し2000トン→5年め4000トン。
・低関税輸入枠の税率は協定発効後2年めに再協議。

 メキシコ側が強く自由化を求めた豚肉は、最終的に1kg393円を超える高級品について現在の関税率を半減する輸入枠を設けることで合意した。輸入枠は初年度3万8000トンから5年めに8000トンに拡大する。
 豚肉では、1kg393円以下の輸入品については、関税込み価格がどの輸入品も同409.9円になるよう関税がかけられている。したがって、低価格になるほど関税は高くなり、これは差額関税制度と呼ばれる。
 今回の合意では1kg393円を超える輸入品についての関税率を半分にするというもので、低価格品に適用される差額関税制度は維持されることになり、高級品についての特別の輸入枠を設けたのが合意内容ということになる。
 JA全中の宮田会長は談話のなかで「差額関税制度の基本を堅持しぎりぎりの内容で決定された」と一定の理解を示している。
 また、オレンジジュースでも関税率半減の輸入枠を初年度4000トン設定し、5年めには6500トン拡大することとされたが、この点について宮田会長は談話で「オレンジジュースについても他の国からの輸入に代替することを念頭に置いた工夫がなされたものと受け止めている」としている。

■市場開拓枠も設定

3月9日メキシコのウサビアガ農牧相が亀井農相を表敬訪問。この席で農業分野は実質合意した

3 月9日メキシコのウサビアガ農牧相が亀井農相を表敬訪問。この席で農業分野は実質合意した。

 ただし、牛肉、鶏肉、オレンジ生果についてはこれまで輸入実績がないにもかかわらず、市場開拓目的として無税枠が設定されることになる。また、2年〜3年め以降、それぞれ低関税輸入枠を設けることになっている。関税率は今後協議されるが、国内農業に影響を及ぼさない内容を実現するにはまだ交渉課題は多いといえる。
 亀井農相は、「国内農業の健全な発展を図りながら、同時に消費者の食品の選択範囲の拡大を実現できる合意に達することができた」との談話を発表し、「本協定締結の効果、影響に留意しながら競争力強化を推進する」としている。
 一方、宮田会長は談話で「今後の実際の影響を注視したうえで、国内需給や価格に影響を生じないよう所要の対策が必要である」と国内対策の実施の必要性を強調している。
 
■アジアとの交渉への影響

 川口外相はテレビ会談後、「両国にとって利益のある内容になった」と工業分野と農業分野のバランスのとれた合意となったと評価、「お互いの事情をふまえて両方の利益になる協定をつくっていこうという意思を持つことが大事」だと今回の交渉経過を振り返り、「アジア諸国との交渉に加速がつく」と語った。
 亀井農相も「最初から100%の成果が得られるものではない。まず小さな範囲でも締結し、お互いが発展するための努力が必要だ」という。
 今回の交渉では農業分野が障害となって合意が進まないとの見方があったが、農水省の豊田国際調整課長は「たとえて言えば、農業はカメみたいに思われているかもしれないが、カメのほうが早くゴールしそうになった瞬間はあった」と会見で反論。経産省の担当官も「交渉とは双方が譲歩するもの。(工業か農業か)どっちが先ということではない」と指摘した。
 ただし、今後のアジアとの交渉では米など競合する品目が焦点になり、より難しい交渉になることが予想される。
 JAグループでは「東アジアの農村の貧困を考えるとき、双方の農業者の発展と各国の農業の共存をすすめるものでなければならない」と主張、「工業サイドの要求実現のために農業にしわ寄せが来るという構図ではなく、各界各層との合意をはかり交渉が進められることを強く期待する」と強調している。 (2004.3.15)



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