4月24日、第3回日米BSE協議が東京で行われ、両国の専門家、実務担当者によるワーキング・グループを設置し、今年夏までに米国産と日本産牛肉の貿易再開について結論を出す努力をすることで一致した。
米国側はペン農務次官、ピアソン同副次官らが出席。日本からは農水省の中川消費・安全局長、厚労省の遠藤食品安全部長、外務省の佐々江経済局長、食品安全委員会の梅津事務局長らが出席した。
ワーキング・グループは5月中旬に初会合を行い、その後、月に1回以上のペースで協議を行う予定だ。
協議事項は(1)BSEの定義・検査法、(2)特定危険部位(SRM)の定義と除去法、(3)サーベイランスのあり方、(4)フィードバン(飼料規則)のあり方など7項目。
ただ、全頭検査とすべての牛からの特定危険部位の除去を行い、しかもこの方針について内外無差別を原則としている日本と、一方で全頭検査を不要とする米国では立場に大きな隔たりがあり、BSEの定義といった根本的な問題の段階で議論が難航する可能性がある。夏までに結論が得られるかどうか疑問視する声が多い。
◆協議の理由 苦しい説明
日本はこれまで日米協議には応じるが、日本の意向に沿った提案を米国から行うのが筋との主張してきた。
3月末に米国のヴェネマン農務長官が亀井農相に宛てた書簡で、日米共同でOIE(国際獣疫事務局)に専門家パネルを設置することを要請し回答を得ることを提案してきたが、OIEのBSE対策は流動的だとしてこの提案は受け入れられないとの返書を4月初めに送った。その際も「ボールは米国側にある」としてきた。
では、今回、協議を進めることに合意できる提案は米国側からあったのか。
外務省の佐々江経済局長は会見で「立場の相当の距離はあるものの、同時にいつまでも未解決で放っておいていいわけではない。米国側からは専門家の協議をすべきとの強い主張があった。冷静に両国の専門家が話し合い、国民に判断の材料を提供することが必要という点で一致した」と説明した。
ただ、会見では「米国からOIEで(日米共同で)の検討の提案もあり」と先月のヴェネマン農務長官の書簡内容を、米国からの提案と認識しているとも受けとれる説明もした。かりにそうであるなら、農水省は大臣が書簡を送り提案として認めないとしたが、外務省の認識とは食い違うことになる。
いずれにしても新たな提案があったのかという点については苦しい説明に終始した。
◆注目される食品安全委員会
ワーキンググループの構成メンバーは現在両国で検討中。ただし、専門家の協議といっても、あくまで2国間交渉のベースになるため日米両国の専門家に限る方針だ。
また、食品安全委員会の参加について梅津事務局長は正規のメンバーではないがオブザーバー的に参加し、議論を把握していく方針を示した。
同委員会は4月22日の会合で委員会として独自にBSE対策のリスク評価を行うことを決めた。リスク評価に基づき、リスク管理を行う農水、厚労両省に勧告などを出す方向となっている。
食品安全委員会は、リスク評価とリスク管理を分ける目的で独立した機関として設置された。その点では、BSE対策について独自にリスク評価を行うことは妥当だ。ただし、今回の見直しは現在行われている全頭検査体制が必要かどうかという観点からのものといわれている。リスク管理部門の体制が甘くもっと厳しくすべきとの勧告ではなく、検査体制の緩和を推進する評価となるのなら、食品安全委員会の役割とは何かという論議を呼ぶことになるのではないか。
一方、国際的には5月にOIE総会でBSE対策の見直しが議論される予定もある。この問題をめぐっては日米協議、食品安全委員会の議論、OIEと注目すべき議論が同時に行われることになる。 (2004.4.28)