5月14日に開かれた基本政策審議会企画部会(第10回)では、「農業環境・資源保全施策」をめぐって2回めの議論を行った。
農地や農業用水の保全管理は地域の共同作業で行われているが、農村では過疎化、高齢化、さらに混住化が進み保全活動に支障が起きている地域も出てきている。
このため農水省はこのままでは食料の安定供給と農業の多面的機能発揮に影響するとして、今回の基本計画見直しで、地域での資源保全の取り組みに一定の支援をすることにした。
14日の企画部会では支援策の基本的考え方について、(1)地域の取り組みを基本とする、(2)環境保全活動と合わせた実施、(3)農家を中心とし地域住民、NPOなど多様な主体が参画する取り組み、などを示した。
■構造改革との関連に意見
企画部会では農業環境・資源保全施策を確立することそのものについての異論は出なかった。
ただし、具体的な支援対象についていくつかの疑問点が出された。
農水省がこの日示した資料では、新たな農地・農業用水の保全施策は「担い手が農業生産の相当部分を占める農村地域に対応」となっており、担い手への農地利用集積など構造改革を実現させた地域に限定する方針とも読める。
JA全中の山田俊男専務はこの点を指摘、「担い手が育っていない地域はこの支援策の対象外なのか」と質した。
また、支援の対象とする取り組みについて、農地・農業用水などの保全活動に加えて、「環境保全活動」の実施も上げていることから「両方の取り組みが一体でなければ支援の対象にはならないのか」と質問した。
農水省は対象地域については、今後の具体的な議論の結果で決まると回答、一方、環境保全活動という要件については「レベルは別にしても」環境との調和を図る活動がなければ、支援策導入に国民の理解が得られない、との姿勢を示した。
■適切な農業生産も推進
また、農水省は農業生産環境対策も推進させる。
環境保全策と同時に、一方で農業生産にともなう環境への負の影響を減らす取り組みを促進する考えだ。
EUの共通農業政策では「通常の適切な農業生産活動」を農業者の責任で取り組むべき水準として決め、それを超えて肥料や農薬などの使用量を削減した場合などに支援している。
農水省も環境保全を重視した農業生産としての取り組むべき事項を「規範」として定めて推進していく考えを示した。
一方、わが国は自給率が低く国内農業生産で国内消費がまかなえていない実態にあり、食料の安定供給を果たすための生産振興も重要であることから、環境保全と生産性向上との「両立」を可能とする農業への転換や誘導が不可欠だとしている。
こうした点について企画部会では「環境保全と生産の効率化が両立できる地域は限定されるのではないか。多くの地域が支援対象にならないのではないか」との指摘もあったが、農水省は具体的な施策のあり方は今後の議論をふまえた検討だとして明確な説明は避けた。
次回は18日に「担い手・農地制度」をテーマに開く。 (2004.5.18)