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食肉輸入業務を抜本的に見直し
−全農が子会社の「偽装」疑惑払拭へ (6/2)

 子会社の(株)組合貿易が輸入豚肉偽装にかかわったという雑誌「週刊AERA」の記事についてJA全農は6月2日、偽装の事実はないとの報告を同社から受けているが、疑いを招いたことは、本会の監督不行き届きであるとして、おわびの報告を会員あてに出した。また同日の経営役員会で、同社の食肉輸入業務を抜本的に見直すとともに、全農の監事が直接、同社の監査に入る緊急対策も決めた。
 疑惑の震源は鹿児島県鹿屋市の養豚農家たちでつくる「有限会社大隅産直センター」。同社代表はカナダから輸入した黒豚を鹿児島産に偽装して売っていたとして不正競争防止法違反と詐欺の疑いで今年3月に逮捕されたが、「AERA」は、それ以外にも同センターは、組合貿易が輸入したカナダ産豚肉を偽装販売していたと報じた。
 同センターが▽もうけを増やすため、組合貿易と中間業者に偽装を持ちかけて実行した▽全農は、その事実をつかんでいたのに隠していた、というのが記事の要点だ。

■組貿に「偽装なし」

 これに対して全農が発表した事実経過によると、国産だけでは食肉の品ぞろえができないという取引先一般の要望に応えて組貿は食肉を輸入しており、その中で平成12年6月からはスポット取引としてカナダ産豚肉を輸入していた。
 しかし、組貿の直接販売先は東京都内の食肉商社であり、その先はどこへ流れていくのか、買い手はつかめないという。また組貿は輸入ダンボールのまま出荷し、伝票でも偽装の事実はなかったとのことだ。
 その後、組貿はカナダ産豚肉の販売が減ったため昨年1月に輸入をやめたが、一方では中間業者から大隅産直センターに売られている可能性をつかみ、同センターを調査した。
 しかし直接の契約関係もないため販売先であることを確認しただけで、それ以上の調査は困難であると昨年7月、全農に報告した。全農としては偽装の事実がないため、公表しなかっただけで、記事にあるような「隠蔽ではない」という。
 このため(株)組合貿易とJA全農は、5月31日、同誌の発行元である朝日新聞社に抗議を申し入れた。
 大隅産直センターは大隅産黒豚の産地直送を売り物にしていた。種類はバークシャー種。組貿が昨年1月までにカナダから輸入した豚肉のうちバークシャー種は540トンにのぼる。
 経営役員会では「このままでは鹿児島ブランドが汚れる」として徹底的な事実調査を求める地元会長の意見も出た。
 組貿は穀物などの飼料原料の輸入が取扱高の約6割を占め、ほかに燃料、肥料などを輸入している協同会社で、食肉の取り扱いは少ない。このため取引先の要請があったとしても、国内生産に影響するような食肉輸入業務は見直すべきだとの議論があり、全農はこれを契機に抜本的検討に入った。早急にまとめて7月末の経営役員会に報告する。

■農水省、報告を要求

 農水省の石原葵事務次官は3日の会見でJA全農が会員あてに出した文書について「国民に対して説明責任が果たされているとは思えない」と述べ、この件についてJA全農に報告を求めていることを明らかにした。 (2004.6.4)



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