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「重要品目」への対応で対立−WTO農業交渉 (6/4)

 6月2日から4日までジュネーブで行われたWTO農業委員会特別会合では、先進国も含め重要品目(センシティブ品目)に配慮する枠組みが必要との認識が輸出国にも広まった。
 しかし、その扱いについては米国やブラジルなどのG20が「例外」として位置付けるべきと主張したのに対して、日本などG10は「ルール」とすべきと主張して依然、対立している。
 
■日本、ルール化求める

 関税削減など市場アクセスについては、ブラジルなどG20が高関税品目ほど削減幅を大きくすることや、上限関税の設定、さらに例外品目を設定してもその場合には関税割当の拡大を義務付けるべきといった共同ペーパーを提出した。
 いわゆる関税を一律的に引き下げすべての品目を低水準にすべきだというハーモナイゼーションの考え方だ。
 これに対して日本はスイス、ノルウエーなどG10各国とともに、競争力のない国の高関税と競争力のある国の低関税という実態を無視したハーモナイゼーションの考え方は不合理で、輸入国に過大な負担を課すと主張。上限関税の設定や関税割当の一律義務的な拡大にも反対した。
 また、重要品目については十分な対応が必要とし、その対応についての「ルール」を枠組みに盛り込むべきだと主張した。
 一方、米国やG20などは、重要品目への対応の必要性では一致したものの、あくまで「例外」扱いとすべきとの考え。例外の具体的な扱いについては枠組み合意後に議論すればいいとの狙いがある。
 しかし、日本を初めG10各国は、重要品目の範囲や課すべき約束などを枠組みに明記すべきとの主張。たとえば、G10共同ペーパーでは「重要品目については最低限の関税削減」とすべきとしている。こうしたルールを枠組みに明記すべきとの考えだ。
 米国やG20などはこうした議論を先送りしたい意向だが、日本などにとっては議論が先送りされると具体的数字を示す段階(譲許表の提示)で、例外品目を設定するかわりに、いわば代償としてその他の品目も含めて過大な約束が課される可能性もあることから、枠組み合意段階で位置づけをはっきりさせるべきとの立場だ。
 こうした議論をふまえグローサー議長は市場アクセスでは依然、各国の意見の違いが大きいとして、この分野で議長が何らか方向性を出すのは困難ととりまとめた。
 
■次回には議長ペーパーも

 ただ、今後の交渉プロセスでは、議長主催の少数国会合や、各グループ間の協議などを重視していく考えで、協議の結果次第では、23日からの農業委員会特別会合にも議長ペーパーが出される可能性が高いと各国の交渉官はみているという。
 もうひとつの焦点となった輸出補助金については、EUも撤廃の方向に踏み出したが、米国の輸出信用や食料援助などについても輸出補助金と同等の規律を課すべきだと主張。しかし、「同等」の定義について不明確なためグローサー議長は専門家による技術的作業会合も必要だと総括しており、この分野でも協議が進む見通しも出ている。

■国内支持で米国に批判

 そのほか、国内支持の議論についてグローサー議長は「貿易歪曲性が強い国内支持ほど多く削減すべき」という点で議論に収斂が見られると総括し、実質的な削減のあり方を議論すべきとしている。
 ただし、国内支持では米国の価格変動支払いについての批判も集まった。この制度は目標価格との差額を補てんするもので削減対象の「黄」の政策。途上国からは輸出補助金と同じ、との批判が強い。
 ところが、米国はこの制度を削減対象外の「青」の政策に移行させようという移行がある。青の規律に上限を設けることなどに表向き改革努力はみせながらも、その水準によっては実質は制度が温存されるため、日本も含め今回の会合では米国に批判が集まったという。議論が収斂しつつある国内支持の分野でも根強い対立がある。
 ただ、グローサー議長は議長主催に少数国会合などを6月14日からUNCTAD(国連貿易開発会議)会合後に集中的に行うとしており、7月合意に向けて農業交渉は加速化する可能性もある。 (2004.6.9)



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