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有利販売に赤信号も 果樹農業に温暖化の影響 (6/9)

 ニホンナシやモモなどでは、温暖化で収穫期が早くなり、お盆の前に出荷する産地が増えたため、これまで早期出荷で高値販売していた産地の有利性や特性が失われたなど、果樹農業に対する温暖化の影響を調査した結果を、農業・生物研究機構・果樹研究所(茨城県つくば市)が6月9日発表した。温暖化が農産物に与える影響を全国規模で調査したのは、これが初めて。
 これによると、ほとんどの地域の、多くの樹種で発芽や開花期が早くなり、果実は大玉化の傾向にある一方で、着色不良や貯蔵性の低下がみられる。また晩霜害や凍害は、暖地で減少、寒冷地では増加の傾向をみせ、霜害は減少している。
 病害虫は発生期間の長期化が認められる一方、病害によっては減少しているものもある。
 報告書は、温暖化にはメリットもあるため、これはこれで積極的活用を図り、問題点については解決策を見つけるための技術開発が必要とした。また将来的には樹種・品種など構造的な産地対応を迫られる可能性もあると指摘した。
 稲や野菜などの1年生作物に比べ、永年性の果樹は気象への依存性が高く、その変動に即応しにくいため、長期的に対応を考える必要があるとして同研究所は現状をつかむ調査をした。
 日本産の高級な果物の輸出に期待がかけられていることでもあり、温暖化対策は今後ますます大きな課題になってくる状況にある。
 報告書は▽温暖化の影響が疑われる主要な現象に対する都道府県担当者の詳しい調査結果▽各地の技術的な対策▽専門的な解析と将来予測などを掲載。「幅広く活用できるようにした」と研究所ではいっている。
 全都道府県の果樹関連研究機関をアンケート調査した結果もまとめたが「温暖化の影響はみられない」という回答はゼロ。「断定はできないが、温暖化の影響らしき現象が起きている」が38都道府県。「影響がみられる」が9県だった。
 報告書の題名は「平成15年度果樹農業生産構造に関する調査報告書」。
みかん りんご
みかん りんご
【寒冷地のリンゴ、暖地のミカンと、産地が明確に分かれている永年性の果樹は長期的な温暖化対応を迫られている。】
(2004.6.11)


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