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ワクチンは抑止・予防に有効
――生産者が鳥インフルエンザ対策国際シンポジウム (6/15)

熱心に討議する参加者
熱心に討議する参加者
 日本鶏卵生産者協会は、6月15日に東京・千代田区の海運クラブで「ワクチン使用問題を中心とする鳥インフルエンザ対策先進国に学ぶ防疫対策」をテーマにした「鳥インフルエンザ対策国際シンポジウム」を開催した。会場には、生産者やその関係者、畜産関係研究者など320名が参加。海外の経験について熱心に聞き入っていた。
 同協会は、高病原性鳥インフルエンザは、一応鎮静化しているが、感染経路が解明されていないこと、ベトナムやタイで終息宣言後に再発していることもあり、今後、日本のどこで発生してもおかしくない状況にある。今秋以降、千葉や茨城などの養鶏密集地帯での大発生について懸念される。
 鳥インフルエンザの発生は世界的に急速な増加傾向にあり、各国がその制圧に苦労している。そうしたなかで、イタリアや香港で大きな成果をあげているワクチン使用が重要な防疫対策として注目されている。こうした世界の防疫対策の「最新動向を聞くことにより、早急にその理論とノウハウを学びとり、次の発生に備えるべきでないか。秋まで問題を放置することはできない」ので鳥インフルエンザ対策の実際の経験をもつ海外の研究者を招いて「防疫対策におけるワクチンの果たしている役割、鳥インフルエンザのウィルス変異による人感染型の出現の可能性などについて論じてもらう」ためにこのシンポジウムを開催した。
パネラーとして国際的に著名な学者が参加
パネラーとして国際的に著名な学者が参加
 シンポジウムでは、過去に鳥インフルエンザ被害を受け、それを制圧したイタリアからイライア・カプア博士(国立ベネチア家畜衛生研究所ウィルス部長、OIE鳥インフルエンザ専門家)とステファーノ・マランゴン博士(同研究所科学技術部長)が「イタリアのDIVAシステム(野外感染鶏とワクチン接種鶏との鑑別法)による鳥インフルエンザの制圧」について報告。次いで、レスリー・デービット・シムズ博士(香港農水産保全局長・検疫専門委員)が、香港における経験をもとに「鳥インフルエンザ制圧に果たすワクチンの役割」を。K.F.シュートリッジ博士(香港大学名誉教授)が「アジアにおける鳥インフルエンザ遺伝子の変異」について報告。その後、小澤義博博士(OIE名誉顧問)をコーディネーターにパネルディスカッションを行った。

■根絶を視野に

 カプア博士が開発したDIVAシステムは、H5N1感染に対しH5N9を用いるというように、使用するワクチン型には野外感染ウィルスのN型とは違うものを使用する。そして、▽ワクチン接種鶏群中にワクチン陽接種のモニター鶏を混飼し、定期的な検査を実施▽ワクチン使用は公的機関の指導監督の下に実施▽野外感染との鑑別にはIFA(間接蛍光抗体法)を用いるというもので、EUとOIEによって承認された防疫対策で、イタリアでは大きな効果を上げている。
 シムズ博士は、香港でも1997年の発生時に日本と同様に感染家禽を淘汰しこれは正しい対応だが「現在では、利用可能な対策はこれだけではない」。ワクチン接種は「適切な手法であり、正しく使用すれば疾病の根絶に寄与できる」。香港ではワクチンを使用することで「最近のアジアにおける流行時に感染例はなかった」と語った。

■手段はすべて使うこと

 各氏ともワクチンの使用によって鶏が抵抗力をもち排出するウイルス量を減らすことができリスクが軽減できる。それは「農場レベルでバリアをもうひとつ設定し、バイオセキュリティーを強化する」(シムズ博士)ことになると指摘。
 国は「移動制限区域内の複数の農場で本病が続発し、迅速な摘発及び淘汰による防疫措置の実施が困難な場合には専門家の意見を聴いた上で、移動制限区域内の農場にワクチンを使用することを検討する」としているが、それでは「手遅れの可能性」が高いという指摘もあった。
 国は「防疫マニュアル」を見直すことにしているが、「抑止・予防に適した利用可能な手段はすべて用いるように考えなければならない」(シムズ博士)という言葉を真摯に受け止めるべきではないだろうか。 (2004.6.18)



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