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大豆の安定供給懇談会で挨拶する高橋座長(6月15日、東京霞ヶ関の共用会議室) |
国産大豆の高値を嫌って原料を輸入大豆にシフトする豆腐や納豆などの製造業者が増えているため、農水省は民間人による「安定供給懇談会」(座長=高橋正郎・女子栄養大学大学院客員教授)を設け、6月15日から、高値を呼ぶ入札取引制度などの検証を始めた。 食品用の大豆需要は平成14年度が103万トン。しかし生産量は23万トンだった。あとは外国産依存だが「米国の大豆は87%が遺伝子組み換え(GMO)だ。ノンGMOをどの国に頼ったらよいのか」との学識者の発言など、初会合では、まず問題点が列挙された。もともと小さい国産大豆のシェアが、さらに縮んでは大変だとの危機感があった。
大豆は水田転作の重点作物として生産拡大を続け、25万トンの生産努力目標を13年度でスピード達成。ところが、15年産は低温や日照不足で23万トンに落ち込み、価格は前年の2倍以上となって、安定供給が崩れた。
■8月に中間報告
一方、消費者の安全指向から国産大豆の需要は高まっている。このため同懇談会で対策を検討。8月半ばに中間取りまとめの予定。「食料・農業・農村基本計画」にも反映される。
懇談会での発言によると納豆製造の場合、業界の国産普及運動で、ここ数年、需要を4倍にしたが、ここにきての「価格暴騰でほとほと困っている」という。
豆腐製造では「製品を値上げできずに赤字を出しており、業界全体として4割ほどは外国産に切り替えている」とのことだ。「東北地方でも豆腐用の品種であるフクユタカなどを作ってほしい」との要望も出た。
■新品種の開発も課題
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手前2人目が森澤委員(全中食料農業対策部長) |
ホクレンの越智信彦農産部長は「需要は掘り起こされたが、気象条件による生産の不安定から需給バランスを崩したと思う。気象の影響を受けない品種が求められる」と指摘した。
大豆の取引は入札、相対と契約栽培だが「3形態のバランスがとれていたかどうかをよく検証すべきだ」との意見や「契約栽培は価格が後から決まるし、数量もクリアが困難だ」との指摘もあった。
「価格変動は当然だが、今回は異常だ」「生産量と市場供給量が比例しない」などの意見に関連してJA全中の森澤重雄食料農業対策部長は「大豆が実需者に届かない。いったいどこに留まっているのか、追求と分析が必要だ」とした。
生産者サイドの意見では▽生産者は米価には敏感だが、大豆の価格には鈍感だ▽高値でも作付けを減らす人さえいる▽理由はJAの代金精算が2年半くらい後になることもあるからだ▽大豆作に魅力を感じる人は少ない▽大豆は栽培期間が長いため気象条件に左右されやすい、などがあった。 一方、大豆備蓄は外国産5万トンだが、これを国産にして安定供給に役立てられないものか、との提起もあった。
次回は7月に、取引方法のあり方を検討する。 (2004.6.23)