|
記者会見で挨拶する上野博史理事長 |
農林中金の平成15年度決算は、経常利益が1812億円で、過去最高益となった。2年ぶりで増益に転じた前期を738億円(68.7%)上回った。景気の緩やかな回復、株価上昇や低金利が続いたことなどが背景にあり、不良債権処理額の減少も寄与した。6月25日の通常総代会は決算を承認、続いて経営管理委員の補欠選任をした。理事の異動では大多和巌副理事長が退任し、後任には増田陸奥夫専務が昇任した。
総代会後の会見で上野博史理事長は、決算について「経済環境の好転に合わせる方向へ資金運用のあり方を切り替え、グローバルな運用に努めながら、良質な資産を積み増し、リスクバランスをはかってきたことが功を奏したと思う。内部留保を積み上げることもできた」と述べた。
■不良債権の処理額減る
決算概況の説明で河野良雄専務は「有価証券投資をタイミング良く拡大した」ことなどを最高益の要因とした。海外分散投資を展開しており、利益への寄与度で見ると、海外6、国内4の割合になるという。
不良債権処理額は13年度をピークに14年度から減少を続け、15年度は前年度より37億円減の513億円となった。不良債権(リスク管理債権)は224億円減って6330億円。
貸出金総額に占める不良債権の割合も0.1%下がり、3.5%となった。都銀に求められている比率は4%なので、すでにこれをクリアした。7大銀行グループの場合はまだ平均5.2%の段階。
経常利益が当初予定の1500億円規模を大幅に上回ったため、剰余金処分では特別配当金を145億円上乗せし、318億円とした。これを含め利用・出資に対する配当金総額は前年度より151億円増の482億円となり、過去最高の還元となった。
■内部留保も積み上げる
配当率は普通出資3%、後配出資1%、優先出資10%。うち普通・優先出資は配当率をやや下げた。従来の配当率が他の金融機関より高かったため、調整するという組織的了解を年度当初に得ていたという。
内部留保も厚くした。今後とも安定的な収益構造を目指して、リスクをとっていくためには自己資本の増強が何よりも必要とし、利益準備金に290億円、任意積立金に658億円を積み立てた。
自己資本比率は単体で12.87%と2.95ポイント上昇した。連結では12.94%と前年度より3.07ポイント上げた。自己資本額は単体で3兆3244億円。
これは、内部留保の積み上げ、自己資本増強に役立つ永久劣後ローン1835億円の調達(信連などからの借入)、有価証券の評価損益の改善などによる。
■含み益大幅にふくらむ
有価証券は、前年度は2400億円の含み損だったが15年度は一転して6900億円の含み益となった。
さらに概況を見ると、預金は7426億円増加、年度末残高は40兆9818億円。農林債券は5902億円減少し、償還が大きかったことなどから年度末発行残高は5兆2168億円。
貸出金は企業の資金需要が低調で1兆3892億円減少し、残高は17兆7982億円。しかし15年度が底打ちだと金庫は見ている。
【農林中金新役員】
▽代表理事副理事長:増田陸奥夫(ますだ・むつお)59歳。早稲田大卒。平成12年常務、14年専務。
▽専務理事:佐藤純二(さとう・じゅんじ)57歳。上智大卒。人事部長から13年常務。
▽専務理事:河野良雄(こうの・よしお)55歳。京都大卒。総合企画部長から13年常務。
(以上昇任)
▽常務理事:高谷正伸(たかたに・まさのぶ)53歳。東京教育大卒。15年企画管理部長。
▽常務理事・大阪支店長:宮園雅敬(みやぞの・まさたか)51歳。東京大卒。15年総合企画部長。
▽常務理事:柴田昇(しばた・のぼる)50歳。京都大卒。15年システム企画部長。
(以上新任)
▽監事:中川洋(なかがわ・ひろし)52歳。東京大卒。前日本銀行検査役検査室長。
|
|
|
|
常務理事 高谷正伸 |
専務理事 河野良雄 |
専務理事 佐藤純二 |
代表理事副理事長
増田陸奥夫 |
|
|
|
監事 中川洋 |
常務理事 柴田昇 |
常務理事・大阪支店長
宮園雅敬 |
(2004.6.29)
|