農水省の石原葵事務次官は7月5日の会見で、6月28日からのBSE日米専門家会合で、若齢牛の輸入について両国の考え方が一致したという一部報道について「そういうことはない。一致はしていない」と否定した。
米国で行われた第2回の専門家、実務担当者による会合では、米国側から「全頭検査を行うことで安心という印象を国民に与えているようだが、どのような検査にも技術的限界があるのではないか」との指摘があった。これに対して日本の専門家は「一定の月齢以下の感染牛については現在の検査方法では検出できない」と答えている。
この回答について石原事務次官は「国内では専門家から(現在の検査法には)検出限界があることはいろいろな場で指摘されていたこと」と話し、BSEに限らずどのようなスクリーニング検査にも限界があることを指摘したにすぎないやりとりだとした。
そのうえで「では(限界があるからと)すぐに(全頭検査を)やめていいのかといえば問題がある」とし、検出限界年齢が不明なことや、仮に20か月齢以下は検査しないとしたとしても「何をもって(月齢を)判定するのか。手段はどうなのかといった問題があり、やはり全頭検査だ、と元に戻る可能性がある」と述べ、「BSEは知見の蓄積が十分ではない。慎重のうえにも慎重な対応が必要だ」と強調した。
■米国に対策強化求める
会合で日本側が説明したのは、全頭検査でも検出が困難な場合があることから、全頭からSRMを除去することで検査の技術的成約をカバーする「ダブル・チェック」を日本では行っていること。そのうえで米国には対策の強化の必要性を指摘した。しかし、米国からはこれに対応した回答はなかった。
何らかの合意どころか認識の差は依然埋まっていない。
6月末に米国でエライザ法で感染が疑われる牛が2頭発見された。いずれも免疫組織化学的検査の結果、陰性であることが確認されたと米国は発表したが、会合で日本側は二次検査については、免疫組織化学的検査と並行して、より感度の高いウエスタンブロット検査も導入すべきではないかと指摘した。発生頻度の低い両国にはより精度の高い方法が求められるとの考えからだ。
これに対して米国側は同国の検査は「国際的にも評価されたもの」と答えるにとどまった。
また、飼料規制についても日本側は、米国ではいまだに肉骨粉が家禽や豚などに給餌されていることから「交差汚染の可能性が否定できない。対策強化が必要」と指摘した。
そのほかサーベイランスについても米国は対象をダウナー牛(歩行不能など)としているだけで、OIEが示しているサーベイランス対象のBSE様症状が認められる牛などが含まれているのかどうか依然不明のため、日本側専門家は疑問を示した。この点については前回会合でも議論になったが米国からの説明がないため議論は平行線だ。
専門家会合は7月に日本で3回目を開催し終了するが両国の専門家の認識には隔たりがある。 (2004.7.6)
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