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北九州で“食と農”のフォーラム (7/10)

 『食と農、考えすぎないほうがうまくいく?』をテーマにしたフォーラムが7月10日、北九州市のJA北九東部本店で、農家、消費者ら150人が参加して開催された。 公開討論会「食の叡智を?を集めて」では、「日本の農業は必要か」「農業の担い手は育つのか」などをめぐってパネリストや参加者から活発な意見が出された。

■産業の軸は農業へ

フォーラムは福岡県営農推進協議会北九州支部が主催。基調講演は石川県のライスクリエイト社長の長田竜太氏が『第一次産業が最先端ビジネスになる』と題し行われた。
 長田氏は、水稲10haを経営をする農家でもある。就農後、企業的農家育成の簿記講習会へ参加しコンサルとの出会いが経営の転機となり「米に特化した農業経営を決意、経営改革の力となった」と述べた。
 経営の基本を価格P、品質Q、品目I、サービスSにおき、米の機能性に着目、玄米胚芽からギャバを抽出する技術を国の特許を利用し製品化、現在は食用化技術の事業化に取り組んでいる。産業の軸が命を守る方向に移ってきている今、農業には大きな可能性があると結んだ。
 また、「考えてから行動する思考は行動を制約してしまうとし、まず行動することから判断材料を得、この課題の対策を考え、つないでいく発想法が大切だ」とも述べた。

■農業の価値の発信を

 公開討論会は福岡県農業経営改善スペシャリストで税理士の半田正樹氏がコーディネーター。パネリストは講演を行った石川県のライスクリエイト社長の長田竜太氏、熊本県の農家で農水省食料・農業・農村政策審議会専門委員の森本一仁氏、JAふくおか八女園芸部野菜課長の甲斐田慎二氏、福岡県農業総合試験場研究員の佐伯孝浩氏の4人。
 農業が高齢化などにより衰退している現状を受けて将来の農業のあり方について討論は行われた。
 「日本の農業は必要か」について「農業は命と直面している。本当に農業の価値は認識されてないのではないか」「食への投資という形でならなければ消費者・国民の理解が得られない」などの意見のほか農業者側の情報をもっと発信するべきだとの主張があった。
 「農業の担い手は育つのか」には、「創るものでなく、必要なら出てくるし、できてくる」、「選択の自由度がないと経営者は育たない。ノウハウで経営者は創れない」といった意見や「農業経営においても、本来の経営者と労働者の二極化に進むのでないか」、 「農業には経営的ノウハウや資本力だけでは通用しない部分がある。農業の改革には、農業者としての秘められた内部からの力が必要だ」などの主張があった。
 農業の存在意義について「農業が産業として効率性を追求してよいいのか?産業という概念以前から農業は存在していた。農業の第一義的役割は、食糧供給ではなく、人が自然から学ぶ場だと思う」、また、「社会の矛盾を解決する新しいヒントは自然界にある。古代文明は、農業が衰退して食料供給に問題が生じたから滅んだのではないと思う。人が自然界に学ぶ路を絶ったからだ」と、会場からの発言もあった。 (2004.7.21)



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