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事業本部制導入へ全農が検討進める
決算総代会で改革方向示す (7/29)


全農総代会
 JA全農は通常総代会を7月29日、都内で開き、平成15年度の事業報告・決算などを承認。経営役員の補欠選任で星野利夫氏(千葉県本部運営委員会会長)を選任した。審議の中で田林聰理事長は「新たに事業本部制を導入し、実質的に事業2段にするという改革方向を検討中である」と競争力強化に向けた改革策を明らかにした。現状は、全農と統合した県経済連が県本部となって、組織的には、JAと全農の2段だが、事業としては県本部も独立採算制の形で手数料収入を得ているため実質的には事業3段のままとなっている。
 総代会では、経営役員会の木下順一会長があいさつで決算については「取扱高は5兆9545億円と、ほぼ計画を達成することができた。当期剰余金は、原料価格の高騰や競争の激化による事業総利益の落ち込みを人件費をはじめとする経費削減で補った結果、85億円を確保し、計画通りの出資配当2%を提案することができた」と述べた。

■“黒豚疑惑”も説明

 議案説明の中では、田林理事長が、カナダ産豚肉を鹿児島産の黒豚に偽装した事件に全農子会社の(株)組合貿易が関わったという雑誌「週刊AERE」の記事について「組貿が輸入、販売したカナダ産豚肉は、荷姿も伝票処理も輸入品のまま適正に販売されており、偽装はなかったと判断する」と説明した。
 また鹿児島県の有限会社「大隅産直センター」と組貿が共謀して偽装したという記事に対しては「組貿が関与した証拠は得られなかった」とし、同センターについては詐欺罪などに問われた代表者の判決確定後に調査を実施すると述べた。

■事業分量減少が響く

 議案審議では、静岡県・JA御殿場の田代武満組合長が「改革論が各方面でぶち上げられているが、真の改革がどう進められているか余り見えてこない。財務改革なくして改革なしと私はいいたい。全農の15年度決算は経常利益率が0.39%と非常に低い。こんなことで改革ができるのか」との疑問を出した。
 田林理事長は「手数料収入に頼る全農にとって事業分量の減少続きがボディブローのように効いている。そこでコスト削減で、これまで通りの利益を維持する戦略でやってきた。15年度の事業利益は赤字計画だったが、事業管理費を計画以上に削って黒字とした。16年度も計画は赤字だが、実績では黒字にしたい。17年度は最初から黒字の計画にする方針だ」と説明した。

■事業2段実現を早く

 また宮城県・JAみやぎ登米の阿部長壽組合長は、経済連との統合が進んでいるものの「機能の2段階制は進んでいない。手数料も全国本部と県本部で二重になっており、JAの手数料と合わせると現実には3段階だ。改革の本質は(組織だけでなく)機能を2段階にすることだ。生産資材価格引き下げにしても改革が見えてこないのは、経済事業改革の総本山である全農の改革が進んでいないからではないか」と質した。
 これについて田林理事長は「現在は県本部ごとに収支均衡をはかるという体制だが、これを改革して全国本部一本で事業本部制とする基本方向を、すでに打ち出し、現在検討を進めている」と明らかにした。
 このほか組貿問題についても質問や意見が出た。さらに監査報告では、藤村征夫代表監事が「疑惑を招いたこと自体が課題である」との意見をつけ加えた。

■取扱高は計画比99%

 決算概要を見ると、取扱高は前年度比で約500億円減少したが、計画比では99%だった。経営収支は、粗利益に当たる事業総利益が1339億円。事業利益は赤字計画だったが、事業管理費を計画以上に削って10億円の黒字とした。黒字は3年ぶりだ。経常利益はほぼ計画通りの85億円としたが、前年度比では33億円の減益となった。

全農経営管理委員会の新会長に種市一正氏

種市一正 新会長

種市一正 新会長

 JA全農は7月29日の総代会後、経営管理委員会を開き、木下順一会長の退任にともなう新会長に種市一正副会長(63)を選任した。また新副会長には裄V武治委員(69)を選任。現副会長の北岡修身氏(69)は留任とした。木下氏は2年前に会長に就任したが、今年5月下旬にJAみなみ信州(長野県)の会長職を任期満了で退任したため全農会長職も任期1年を残して退任した。このため新しい正副会長の任期は1年となる。
 ◇経営管理委員会会長
 種市一正氏 昭和16年6月生まれ。平成8年青森県農協中央会会長、同県経済連会長、11年全農理事、13年おいらせ農協会長、全農県本部運営委員会会長、14年全農経営管理委員会副会長。
 ◇経営管理委員会副会長
 北岡修身氏 昭和10年1月生まれ。平成3年高知春野農協組合長、13年全農高知県本部運営委員会会長、15年全農経営管理委員会副会長。
 ◇経営管理委員会副会長
  裄V武治氏 昭和10年3月生まれ。平成15年えちご上越農協会長、新潟県農協中央会会長、全農新潟県本部運営委員会会長。

組貿が食肉から撤退

 鹿児島県鹿屋市の有限会社「大隅産直センター」がカナダ産豚肉を国産に偽装した事件に全農子会社の(株)組合貿易がかかわったとする「週刊AERA」の疑惑報道について、全農は7月29日「その事実はない」との調査結果を発表した。
 組貿は食肉を輸入しており、うちカナダ産豚肉が都内の業者を経て同産直センターにも販売されていた。このため組貿の担当者が個人的にセンターと共謀していたのではないかとの疑惑も出たが、弁護士や全農監事の調査に対し、担当者はそれを否定している。
 センター側に対する調査は、代表が公判中であったため、これからとなる。
 一方、全農は子会社の管理が不十分であったことを反省し、組貿の事業を見直す委員会を設け、検討の結果、組貿は輸入業務を含めて一切の食肉事業から撤退すると決めた。
 今後、同社の事業は飼料やコメと麦などの輸入、国産農産物の輸出その他に絞られる。残る事業と品目については原則として全農本体の各事業部門が直接行うことにした。同社の事業の7割は飼料が占めている。 (2003.7.30)



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